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2025年も残りあとわずかですね。2025年の「工務店リノベ」はどんな状況だったのか。特に事業化の観点から、2回にわけて振り返ってみましょう。
2025年を振り返るのにあたり、以下の10項目に焦点を当ててみたいと思います。
1.4号特例縮小 市場の影響は最小限、生産性が課題
2.住宅価格高騰が実家リノベーションの追い風に
3.類似コンセプトの新規参入が増加傾向
4.各地でリノベーションモデルハウスの開設が増加
5.リノベーション会社のM&A
<後編>
6.平屋ブームをリノベーションに応用
7.「中古購入+性能向上リノベーション」が地方へ波及
8.「性能向上リノベ再販」への関心の高まり
9. 外国人(特に東アジア系)によるリノベーション
10.政令指定都市中心に「木のマンションリノベーション」が脚光
1. 4号特例縮小 市場の影響は最小限、生産性が課題
2025年4月の法改正が迫るにつれて「リノベーション市場はどうなるのでしょうか」という不安の声や、「リノベーション事業に大きなブレーキがかかる」「性能向上リノベーションの市場は半減する」「古民家はもはや建て替えるしか選択肢がない」など、悲観的なシナリオもささやかれていました。
しかし、現時点で市場自体への影響は少ないと感じています。私のクライアントにおいては、確認申請リノベを対象に展開する会社、確認申請不要(主要構造部の過半にあたらない)リノベを主軸に展開する会社、それぞれが存在しますが、緩和措置もある中、対応スキームや判断基準などのノウハウを蓄積しながら、業績自体は堅調に推移しています。
確認申請が必要となる場合、確認が下りるまでの期間を読みづらい点や、生産性の問題など懸念点はありますが、リノベーション自体の認知度の高まりや相続を起点とする相談ニーズもあり、今後も市場は動いていくと見ています。
2. 住宅価格高騰が実家リノベーションの追い風に
住宅価格の高騰は、特に実家リノベーションの追い風になっていると実感します。建て替えとの比較では工事範囲など、費用を調整しやすいというリノベーションの利点を活かしやすいです。
建物の条件によってはリノベーション向きではないという判断のもと、建て替えを提案するケースもありますが、一定の見極めルールのもと、新築だけでなく、リノベーションという受け皿を用意することはユーザーにとっても、事業としても、さらには社会的な観点でも大きな意義があると言えます。
今後、経済的な理由で持ち家に対する取得意欲が低下していくことも懸念される中、事業者としては実家の古さを隠すのではなく、古さを懐かしさに置き換えたり、古さと新しさを融合したり、こうした情緒的な価値も訴求しながら、市場を喚起する姿勢が大切だと常々考えています。
また、新築、特に建て替えはリノベーションの顧客像とほぼ重なるため、社内の部署間連携のあり方や関係性など総合力がカギになっていくでしょう。
3. 類似コンセプトの新規参入が増加傾向
多くのエリアにおいて、戸建てリノベーションの領域はブルーオーシャンと言える状況から、昨今の新築着工減の影響もあり、類似コンセプトのリノベーション会社がゆるやかに増加しています。
断熱への意識、耐震への意識はそれぞれ地域差があるものの、「需要>供給」から「需要<供給」へと需給バランスが変化し、地方においてもリノベーション市場が成熟しつつある様相です(競合状況、集客コストなどから判断)。成熟マーケットの特徴としては同質化が懸念され、相見積りも増えて、事業として軌道に乗せる難易度が徐々に高まっていくと言われています。
市場が活性化するという側面もある一方で、当然断熱、耐震を押さえながら独自性や専門性を磨き上げていくことがますます重要になっていると感じています。例えば、自社の強みに立ち返り、和風建築の構造美、機能美に日々の発信を絞ったことにより、数カ月で複合的にInstagramのフォロワーや自然検索の流入が倍増し、リノベ案件の反響増につながっているという例もあります。
4. 各地でリノベーションモデルハウスの開設が増加
リノベーションを施した集客目的のモデルハウスも、各地域で着実に増えています。一方で「リノベーションモデルハウスを開設し3年目になるが1件もリノベ案件の集客ができていない」「モデルハウスオープンをきっかけにリノベ案件の集客はできたけど受注に至っていない。どのように課題を解決したらよいのか」といった新規の相談もありました。
こうしたケースの多くは、モデルハウスの開設が点になっていて、部分最適にとどまっていることが大きな理由です。一次取得者なのか二次取得者か、どの価格帯を狙うのか―自社の強みを活かせるターゲット設定、適切な集客媒体の見極め、顧客のマインドセットのための営業フローといった集客面、営業面、さらには組織体制も含めた全体設計が求められます。
また、モデルハウス展開は仕入れ力や売却フェーズで巧拙の差が出やすいためノウハウの蓄積が必要です。
5. リノベーション会社のM&A
M&Aの増加は業界ニュースとして様々取り上げられていますが、私の身近なところでも、北王とアルティザン建築工房(いずれも札幌)、マエダハウジング(広島)と夢工房(出雲)といったM&Aの締結事例がありました。
当然締結がゴールではなく、締結してからのシナジーが期待される中、人材交流や相互理解、ノウハウの融合をはじめ地道なプロセスが続きます。リノベーションへの対応力は市場価値、注目度が高く、今後もリノベーション会社のM&Aは増えそうですが、属人度が高いリノベーション事業において、暗黙知を外出ししたり、仕組み化したりしていくことは簡単なことではありません。
いかにM&Aによる相乗効果を高めていくか、中長期的な視点での取り組みが必要でしょう。
(後編に続く)

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