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あけましておめでとうございます。2026年の「リノベの勘所」は、まず「プロセスエコノミー」を取り上げます。あの人気テレビ番組の構成もヒントにしながら、リノベーションならではのプロセスの見せ方を考えてみましょう。
リノベーションの醍醐味とは
「難問山積みの古民家に挑戦」「老朽化し様々な問題をかかえる下町の物件に匠が立ち向かう」「長年老夫婦を悩ませてきた家を劇的に大改造」というキャッチに象徴的なBGM、「なんということでしょう」という名フレーズ。お気づきの通り「大改造!!劇的ビフォーアフター」(テレビ朝日系)のことであり、特番という扱いで今もなお受け継がれています。
構成としては冒頭10分から15分をかけて、施工前の様子を紹介。建物が傾いている、限られたスペースに大家族が住んでいる、など施工前のインパクトで視聴者を引き付けています。その後、どのようになるのか期待感を持たせながら、職人が解体したり、手仕事をしたり施工中の様子が約20分、最後に施工前と施工後を交互に取り上げるというかたちが基本形です。
バラエティ番組ならではの極端な演出もありますが、マイナスの状態から劇的に変化させるストーリー性があるからこそ視聴者の心情に訴えかけることができ、新築にはない包括的な改修ならではの醍醐味の一つと言えるでしょう。
リノベーションこそプロセスエコノミー
「プロセスエコノミー」という概念があります。尾原和啓氏による関連書が刊行されてから数年経ちますが「プロセスエコノミー」が重視される背景について、書籍の一部を抜粋します。
・つくっているところではお金を生み出さず、できたものを売るのがアウトプットエコノミー
・(多くの業界で)アウトプットエコノミーが一定の規模まで達成したことで、もう差別化するポイントがプロセスにしかないという状況になった
・人もモノに埋もれてしまう時代。そんな中、プロセスを共有し、たとえ少数でも熱いファンを作ることは大きな武器と言える
こうしたプロセス重視の考え方はリノベーション事業にも大いに通じるものがあり、ルームツアーをはじめアフター中心のコンテンツは同質化が懸念される中、施工前⇒施工中⇒施工後という一連のプロセスには大きな価値があると考えています。特に持ち家のリノベーションを対象にした事業なら、以下のような点が確認しておきたいポイントになります。
□リノベーションサイト全体がアフター画像で構成されていないか
□施工事例ページがほぼアフター画像になっていないか
□見学会の告知がアフター画像だけになっていないか
□リノベーションモデルハウスが新築のモデルハウスと思われていないか
リノベーションと言っても事業形態は複数あり、すべての会社に応用できるとは言いませんが、もし他社と同質化しているのではと感じられるのなら、アウトプットエコノミーとのバランスを取りながらプロセスエコノミーという観点も柔軟に取り入れる必要があるかもしれません。
長らく新築マーケティングに従事してきた方にとっては、「なるほど」と思う方は少数派で、受け入れがたいと思う方が大半かもしれませんが、実際に「施工前の外観が自分の家に似ていて共感した」(ビフォー共感)という声や、基礎補強や構造用合板の設置、断熱材の充填など施工中の動きも交えながら動画配信し、工事単価が2000万円級、あるいは3000万円級のリノベーション案件につながる例も珍しくありません。
| アウトプットエコノミー | プロセスエコノミー | |
| 意味 | リノベーション後の様子で共感・支持を集めること (例:ルームツアー) |
リノベーションの施工過程で共感を得たり、ファン化を図ったりすること (例:現場ブログ、施工中動画等) |
| 特徴 | ・情報が多く飽和状態になりやすい ・独自の世界観や優れた空間デザイン等よほど抜きん出るものがないと差別化が難しい |
・完成後に比べて、プロセス情報の発信は限られている ・会社開示により、信頼度の向上につながりやすい ・理念や哲学が反映されたプロセスはマネされにくい |
私と意見交換するリノベーション会社の社長が「自社の典型的な顧客像である性能向上を重視する方ほど、施工事例ページの施工中コンテンツをじっくり読みこんでうちの会社に相談に来る。だからこそ、施工中の写真と豊富な文字量を常に意識している」とおっしゃっていたのが強く印象に残っています。
また「徹底的に考えてリノベをしたら、みんなに伝えたくなった50のこと」(ちきりん著)にはリノベーション会社を見極める過程でアフター画像も確認しつつ「日々の施工中の様子をブログで更新する会社が参考になった」いうくだりがあり、目を引きました。
専門知識を持たない、いわゆる建築素人の方にとっては技術的な判断までは難しいはずですが、施工事例ページ上に記載されている施工中の解説や日々発信される現場ブログを通じて、会社のリノベーションに対する真摯な姿勢や施工品質に対する熱量を感じ取っているのではないかと考えられます。
特に断熱改修や耐震補強といった性能向上に関してはプロセスにこそ、自社ならではのこだわりがあるはずです。つまり、プロセスエコノミーは小手先のテクニック論ではなく、建築を極めようと研鑚を重ねる工務店にこそ、価値の源泉があると私は考えています。

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