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前回に引き続き、2025年の「工務店リノベ」はどんな状況だったのか、主に事業化の観点から振り返ります。
【関連記事】2025年の「工務店リノベ」を振り返る」 前編
1. 4号特例縮小 市場の影響は最小限、生産性が課題
2. 住宅価格高騰が実家リノベーションの追い風に
3. 類似コンセプトの新規参入が増加傾向
4. 各地でリノベーションモデルハウスの開設が増加
5. リノベーション会社のM&A
<後編>
6. 平屋ブームをリノベーションに応用
7.「中古購入+性能向上リノベーション」が地方へ波及
8.「性能向上リノベ再販」への関心の高まり
9. 外国人(特に東アジア系)によるリノベーション
10. 政令指定都市中心に「木のマンションリノベーション」が脚光
6. 平屋ブームをリノベーションに応用
2025年、平屋比率はさらに高まっているというデータもあり、リノベーション事業においても「1階だけリノベーション」「平屋のように暮らせるリノベーション」といった切り口での販促が効果につながっています。受注の半分以上が1階だけリノベーションという例もあります。大都市を除いて「平屋のリノベーション」「2階を減築して平屋にするリノベーション」といった訴求は今後もさらに増えそうな勢いです。
とは言え、新築市場と違ってリノベーション市場の中でさらに細分化しますと顕在客(今すぐ客)は限られるのが現状です。平屋に限ったことではありませんが、ニッチテーマのコンテンツを揃えて潜在顧客とのタッチポイントを整えること、遅効性で持続性のあるマーケティングの追求にこそ、勝機があると考えています。
7. 「中古購入+性能向上リノベーション」が地方へ波及
中古流通が促進されつつある中「中古購入+性能向上リノベーションの引き合いが地方にも波及しつつある」という声を耳にしますが、中古購入客に工務店リノベならではの高性能なリノベーションが受け入られる比率は特定の人口密集エリアを除いて、地方ではまだまだ限られている印象です。
断熱改修、耐震補強といった性能向上を大前提とした実家リノベーション、持ち家リノベーションを主軸にしながら、中古リノベーションの案件が1~2割混ざってくることを想定して事業を展開することが、現時点では有効だと考えています。同時に中古流通の今後の促進を見据えて、コストを抑えたリノベ提案の準備も進めておきたいところです。
8. 「性能向上リノベ再販」への関心の高まり
価格が重視される傾向が強いため、当然ながら市場では表層の改修による再販事業が中心ですが、性能向上の意識の高まりや生産性の観点もあり「性能向上リノベ再販」の取り組み事例は少しずつ増えています。筆者のクライアントでは、再販で利益追求するのではなく、再販+(モデルハウスとして活用)でリノベーション受注のベストバランスを探りながら事業を展開することが多いのが現状です。
性能レベル含め、自社の標準仕様とは別仕様を採用してコストを調整することに対してハードルの高さもあります。不動産会社が手がける事例も出てきており、事業特性上、自然な流れかもしれません。今後の動向を注視したいと思います。
9. 外国人(特に東アジア系)によるリノベーション
限られた例ではありますが、ここ数カ月だけでもクライアント先で外国人、特に東アジア系の方々による自邸の高額リノベーションが続きました。香港の方から7200万円のリノベーションを受注した例、台湾の方から町屋リノベーションを1億円で受注した例や、その他、外国人からの古民家案件が4件続いたという例もありました。
特に古民家、和風建築に対する外国人からの関心の高さが顕著です。為替の影響も大きいでしょうが、単に露出するだけではなく自社が生み出す提供価値が、商圏という概念を越えて、欲している人に届きやすくなっているという見方もできると思います。政権交代もあり、今後は制限がかかる可能性もありますが、注目したいテーマの一つです。
10. 政令指定都市中心に「木のマンションリノベーション」が脚光
法改正の影響もあるかもしれませんが、平屋同様各地でマンションリノベ市場へと対象を広げる動きもありました。中でも「木のマンションリノベーション」は札幌や横浜、福岡など政令指定都市中心に各地へ拡がりつつあります。
マンション市場は構造がからみにくいこともありプレイヤーが多く、さらに高属性の顧客に対するマーケティングは商圏人口をはじめ地域性、自社のブランド力にも左右されやすいテーマです。
一方で、持ち家マンションの終の棲家ニーズと整合性が高い点、工務店リノベの観点で強みを活かしやすいコンセプトである点は大きなプラス材料です。未開拓のエリアも数多く見受けられ、今後のさらなる広がりを期待します。
以上、そっと背中を押す視点や考えが少しでも伝わればと思います。引き続き、工務店がいかにして未来を切り拓いていくのか、リノベーションが大きな選択肢の一つであると信じて、その可能性を追究していきます。

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