森こうすけさんに学ぶ「全館空調実践塾」12月開講

新建ハウジングは12月、「森亨介氏とともに学ぶ 全館空調実践塾」を開講する。講師は凰建設（岐阜県岐阜市）社長で一般社団法人ミライの住宅代表理事を務める森亨介さん。2025年12月から翌年8月までの全6回で、先進的な事例視察を交え、体系的な空調設計を学ぶ。

住宅の高断熱・高気密化が進むなか、全館空調を採用した住宅では「夏に湿度が下がらない」「冬に結露が生じる」といった声が増えている。背景には、断熱性能が高まったことでエアコンの運転が止まりやすく、設備性能の限界が露呈しやすくなったことに加え、空調設計を工学的に扱える実務者が不足している点がある。居住後に施主が抱いた課題や不満はSNSで拡散され、社会的に共有されやすくなっており、工務店にはそれらに応える説明力と解決力が求められている。

本塾のカリキュラムは、座学講義（120分）と物件視察・事例研究（約180分）の2部構成。午前に理論を学び、午後に実践を検証することで、科学的根拠と現場再現性を両立して習得できる。座学では空気線図を用いた設計手法を体系的に学び、露点温度や絶対湿度、負荷計算といった基礎を端的に押さえる。実測値を読み解き、設備選定や配置を工学的に行う力を養う構成とする。

視察は空調稼働期に合わせて、冬（12〜2月）と夏（6〜8月）の2期に分かれ、それぞれ3回ずつ実施される。

冬の暖房編では、九州（福岡・熊本）を拠点に新築住宅年間約90棟前後を手がけ、その全棟に床下エアコンによる全館床暖房を標準採用するエコワークス（視察地・神奈川県横浜市）、蓄熱式薪ストーブを高断熱住宅に組み合わせる凰建設、温度差や風圧差といった自然力を利用し、機械に頼らないパッシブ換気を実践するアーク・ライフ（東京都町田市）の事例を学ぶ。

夏の冷房編では、冷暖房・換気一体型ユニットZehnderを導入する中日サニオン（愛知県一宮市）、再熱除湿を建築的に組み込んだ壁掛けエアコン方式を採用するラファエル設計（栃木県上三川町）、正圧循環によって壁掛けエアコンを全館冷房に応用するJIN建築工房（愛知県名古屋市）の事例を取り上げる。

各回では、実務者本人から空調計画の考え方をはじめ、機器配置やダクト経路、施工精度など現場での工夫を学ぶ。また森氏は、6つの事例を横断して再現のポイントと注意点を整理し、実務に生かせる形へと体系化する。さらに現地視察では、床下や小屋裏の温熱環境、気流の流れ、機器の動作音までを体感し、図面や数値では掴みにくい快適性を検証できる。

本塾はアウトプットを重視。受講者は講義と並行して自社物件で計画・実測・改善に取り組み、受講期間中に計２回レポートを提出・共有する。複数社の定量データを集めることで、比較検証の精度を高める。希望者はオンライン発表会で成果を発表し、自社仕様の標準化へとつなげる。

9月26日にはオンラインで事前説明会が開かれ、全国から計88人が参加した。森氏は「湿度が下がらない」「結露が生じる」など、施主がSNSで発信する事例を引用しながら、「顧客のリテラシーが高まるなかで、プロが知識や技術で劣れば存在価値はない」と工務店が空調設計力を高める必要性を強調。その上で、本塾の目的として「湿気や暑さ寒さに関するクレームをなくすこと」を掲げた。

森さんは事前説明会で「湿度が下がらない」「結露が生じる」などの施主のSNS投稿を取り上げ、工務店に課題解決の必要性を訴えた

受講料は現地コース35万2000円、オンラインコース19万8000円（全6回・税込）。オンラインは1社1画面で複数人受講可。各回終了後にはアーカイブ配信があり、欠席や復習に対応できる。申込締切は11月26日で、定員に達し次第終了となる。詳細は公式ページから。

【講師紹介】 森亨介（もり・こうすけ）氏

1982年岐阜県生まれ。国立岐阜工業高等専門学校で建築環境工学を学び、東京・横浜の住宅会社勤務を経て、2009年に実家の家業である凰建設（岐阜市）に戻り、3代目に就任。パッシブハウス級の高性能住宅設計に取り組み、先進事例を重ねてきた。2017年には母校・岐阜高専の非常勤講師に就任するとともに、一般社団法人ミライの住宅を設立。全国各地で空調・換気設計をテーマに、地元工務店や設計者を対象とした少人数制講座を主宰し、実務に直結する教育活動を続けている。

※本記事は『新建ハウジング』（2025年10月10日号掲載）に加筆・修正を加え、デジタル版用に再編集したものです。

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