【見せる構造】オーバーハングを玄関への動線に生かす

新潟県は「空が曇っていても晴れ」というほど雨が多く、移動手段は車がメインです。車中心に生活している地方都市では、駐車スペースから玄関までの設計はプラン提案の中でも重要視されます。なかでもアルミ製のカーポートはとても人気が高く、導入を望まれるお施主さんが多い印象です。しかし、「予算が合わない」、「設置スペースの確保が難しい」といった理由から断念される場合も多々あります。今回はこれらを一挙に解決する、構造を利用したオーバーハングの一例を紹介します。

鈴木 淳 すずき・じゅん ネイティブディメンションズ一級建築士事務所 主宰

1973年新潟市生まれ。数寄屋建築、ツーバイフォー工法、接合金物工法などの設計経験を経て2008年に独立。構造・温熱・意匠を一体化した「小さい家」の設計が強み。2018年には地元建築事業者とともに勉強会「住学（すがく）」を共同創設。以降、得意分野を生かしたコラボやサポートなども手がける。 現在、新潟県建築士会新潟支部支部長、新木造住宅技術研究協議会（新住協）新潟支部副支部長も務める。昨年7月には、待望の孫が生まれおじいちゃんになる。

Chapter 4
ドア・トゥ・ドアがつくる快適動線

オーバーハングを安全に採用するには

オーバーハングとは2階が建物本体（1階）から飛び出している構造を指します。オーバーハングを上手に使いこなせれば、面積や法令の厳しい敷地の活用や、意匠的な特徴を出すことなどができます。しかし、1階よりも2階が重くなってしまうため、地震の時に揺れやすいという構造的な弱点があることを忘れてはいけません。オーバーハングの採用時には、許容応力度計算をすると必要な梁の大きさや壁量を確認できます。

また、飛び出した構造体が振り子にならないよう大きく2つのことを注意しなければなりません［写真1］。

①躯体を固めるため、付け根や足元はしっかりと耐力壁を設けること
②屋根荷重が必要以上にオーバーハング部分に流れない伏図をつくること。

「許容応力度計算をしてNGが消えたからOK」ではなく、上記の2項目を加えて検討するのがオーバーハング設計のポイントです。

柱のない空間の恩恵

この記事は新建ハウジング7月30日号8面（2025年7月30日発行）に掲載しています。

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