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近年、移住に対する関心の高まりを、工務店の成長機会にしようという動きが注目されています。「移住×リノベーション」は工務店にとって有効な打ち手になるのか、その可能性を探ります。
各都道府県、市町村の移住相談窓口などへの相談件数は2020年の29万件から、24年には43万件となっており、過去5年間、右肩上がりが続いています。
移住が一過性のブームではなく、大きな潮流であることはこうした数字に現れています。都市一極集中という課題に対する国の方針、リモートワークの浸透、二拠点居住への関心の高さも数字を押し上げている状況です。
もちろん、すべてが中古住宅購入やリノベーションの依頼につながるわけではありません。ですが、移住後の居住形態については約半数が賃貸で、残りは新たに持ち家を所有したり、実家だったりというデータもあります。当初賃貸に住みながら、その後、持ち家を検討するという流れもあります。
Uターン含む「移住×リノベーション」はどのエリアでも需要がある
「自社のエリアは、移住で人気になるような地域ではない」と見切ってしまう声もあるようです。
しかし、もちろん都市部からのアクセスをはじめエリア特性の違いはありますが、移住に対する明確な定義はなく、Uターンも含めるとどの地域においても大きな需要があると言えます。例えば富山、石川、福井、静岡、沖縄は「県外移動歴あり+Uターン組」が「県外移動歴あり+非Uターン組」を上回っています。
その他のエリアでも一定のUターン人口があり、それだけリノベーションをはじめ住宅事業の潜在ニーズがあると言えます(国の人口移動調査・2023年)。こうした人口移動を踏まえ、大都市圏を対象にUターンも見据えたリノベーションを訴求するSNS広告を打ち、反響につなげようとする動きも着実に増えています。
年々増え続ける「移住×リノベーション」の事例
私のクライアントでも、移住を意識したリノベーションモデルハウスの開設や、自治体が主催する移住セミナーの講師を務めながら空き家をあっせんすることで、リノベーション受注につなげている例があります。
移住希望者からすれば当然住まいは大きな課題となっており、空き家を紹介するだけでなく、空き家の見極めとリノベーション費用のバランスを考慮した提案ができることを強みにしています(希望の住まいが見つからず長期化する例も少なからずあります)。また、移住しリノベーションを行ったOB顧客へのインタビュー記事や地域の不動産情報、支援金など、移住関連のコラムを複数投稿していくことにより、移住ニーズ獲得のきっかけにする例もあります。
比較的温暖な首都圏エリアから地方への移住者にとっては、気候の変化も心配ごとの一つとなっているという声もあり、性能向上(特に断熱)コンテンツの打ち出しや遠隔地とのやり取りを想定したZoom相談の設定も当然有効です。物件の内覧以外はほぼオンラインで打ち合わせをしています。
一連のコンテンツや移住相談、土地や物件を複数見学する移住ツアーの定期開催により、新築需要の落ち込みを移住関連で補っているという工務店もあり、今後さらに拡大するポテンシャルを感じます。
「リノベーション+エリア名」で検索上位表示されることはもちろん、モデルハウスを含めたリアルの見学、オンラインセミナー、相談会など、リアルとオンラインで「見る」「学ぶ」「相談」をバランスよく企画することで案件化する可能性が高まります。遠隔地であればあるほどオンラインを通じて依頼先を1社に絞り、現地訪問の際は最終確認という位置づけのケースも多いです。
また、継続開催することで地域活性化に熱心な工務店というイメージを社内外に浸透させることができる点は効果の一つです。

「移住×リノベーション」集客フローの一例
外国人による伝統建築、和風建築ニーズの高まりも大きな潮流で、中古住宅(主に古民家)を購入し、永住のためのリノベーションを依頼するケースも増えており、実際に業績貢献につながっているという声も筆者のもとに届いています。
「昨期との大きな違いは外国人を中心にした受注増です。外国人からのリノベーション案件は高単価になる傾向があり、今期は通常受注6億円に2.8億円がプラスオンされます」…この工務店では、自社の世界観に絞ったことでInstagramのフォロワーが倍増したのに比例して、フォロワーのうち2割を占めるようになった外国人からのリノベーション依頼が増加。為替の影響や意匠性など、条件が揃っているという背景はありますが、古民家が点在する地域特性を活かしながら自社のスタンスを示したことによる効果と言えるでしょう。
社会的な意義と成長を両立する
自社のOB顧客に自治体職員がいれば、その方から窓口(担当者)につなげてもらい、連携の可能性を探るのもひとつの手ですし、まずは自社サイト上で移住関連コンテンツを打ち出すことから始めるのも良いでしょう。
移住ニーズが拡大する中、工務店にとっては自社や建物の価値をPRするだけでなく、自社をとりまく地域の魅力を伝えるという役割も増していると感じます。人口減少や空き家が社会課題になっている中、地域の資源に目を向けて移住促進を図る一連の取り組みは高い社会的意義があると同時に、地域に密着する工務店にとって成長機会になると考えています。

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