矢野経済研究所(東京都中野区)は、今年4~6月にかけ、国内の高齢者住宅市場に関する調査を行い、その結果を「2025年版高齢者住宅市場の徹底研究」としてまとめ、6月27日に発刊した。このほど、その調査サマリー報告書を公開した。
調査では、高齢者住宅及び施設の供給・運営事業者、高齢者住宅紹介事業者等に、ヒアリングと文献調査を実施。「有料老人ホーム」「軽費老人ホーム」「シルバーハウジング」「サービス付き高齢者向け住宅」の4類型を対象に、市場の現状と将来展望を分析している。
改めて高齢者住宅とは、高齢者が生活しやすいように設計された住宅のこと。ここでは、介護サービスや高齢者向けの生活支援サービスを受けることが容易な環境が整備されているバリアフリーの集合住宅と介護保険施設を指す。
報告書では同市場について、新規供給が続いているものの、供給の増加幅は年々縮小傾向にあり、今後も同傾向は続くと見込んでいる。その上で国土交通省が掲げる「住生活基本計画(全国計画)」で、2030年までに高齢者人口に対する高齢者向け住宅の供給割合を4%とする目標が設定されていることに言及。「現状の供給ペースでは達成は困難とされており、供給の加速が求められている」とした。
また、高齢者向け住宅への住み替えを促進するだけでなく、バリアフリー化など高齢者仕様に整備された既存住宅の増加を「注目すべきトピック」として挙げる。特に住み慣れた自宅での生活や、家族に見守られながらの看取りを望む高齢者が多いとみられることから、適切な設備を備えた既存住宅の活用が安心・安全な暮らしの実現に寄与するとした。
報告書では、高齢者の暮らし方や住まいの在り方が多様化している現状を指摘。従来型の老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅に加え、医療ケアに特化した施設の台頭など、事業者側の対応も進展していると解説。一方で、施設選びにおいては、生活圏内での入居を希望する傾向があるものの、医療ケアが必要な場合は遠方であっても安心して暮らせる体制が整った施設を選ぶケースもある。
こうした中、将来的にはこれらのニーズに応えるため、高齢者住宅専門の紹介事業者による第三者的な立場からのアドバイスや施設紹介が、高齢者の安心できる住まい選びに貢献することを期待するとまとめている。
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