国民生活センターがこのほど公表した「医療機関ネットワーク事業情報からみた高齢者の家庭内事故」報告(PDF)によると、2020年4月1日から25年7月31日までに、参画医療機関から同センターに寄せられた65歳以上の高齢者の家庭内事故情報は923件だった。このうち転倒・転落による事故が全体の約半数を占めた。
医療機関ネットワーク事業情報は、消費者庁と国民生活センターが共同で、参画医療機関を受診した事故情報を収集するもの。家庭内での事故など消費生活上の事故に関するデータを継続して蓄積している。
「住宅内での転倒」は57件
家庭内でけがをした人は、65~75歳未満が369件、75歳以上が554件。男女比では「男性」が485件、「女性」が438件となり、男性の数が女性を上回った。このうち75歳以上の「女性」が278件と多数を占めた。
事故のきっかけは、75歳未満では「転落」と「刺す・切る」がそれぞれ82件(22.2%)、「転倒」が73件(19.8%)、75歳以上では「転倒」が185件(33.4%)、「転落」が129件(23.3%)となっている。具体的な事例では、「住宅内での転倒」(57件)、「階段で足を滑らせる(転落)」(68件)、「脚立から転落」(49件)などが多数報告されている。
治療の必要性では、転落・転倒による「骨折」や「頭蓋内損傷」の症状によるものが半分以上を占めている。

住環境の改善で転倒予防を
自宅内での転倒・転落事例を詳しくみると、「浴室内で体勢を崩して転倒」(70代・女)、「自宅内でスリッパが脱げ、靴下が滑って転倒」(同)、「歩行器で歩行中に歩行器が先に進み転倒」(80代・女)、「トイレに行こうとして階段から転落」(70代・女)などがあった。他にもコードに引っ掛かったり、わずかの段差につまずいたりする例も確認された。
同センターは、「高齢者は身体機能の衰えにより、わずか1~2㎝の高さの敷居や、じゅうたんの端、室内のコードなどに足を引っ掛けることもある。環境的対策として、階段や段差に手すりや滑り止めを設置すること、室内のコード類をまとめること、滑りにくいスリッパや安定した高さのベッド・椅子を選ぶなどの工夫も大切」だと指摘し、転倒防止のための住環境の改善を求めた。
■関連記事
高齢者住宅市場、新規供給は縮小傾向 既存改修に注目―矢野経
「安全持続性能」を実際の設計に生かすノウハウ共有
持家率8割世代に問われる住まいへの備え―25年「高齢社会白書」
バリアフリー設計の新ガイドラインを公表 別冊資料も充実
住宅ビジネスに関する情報は「新建ハウジング」で。試読・購読の申し込みはこちら。






























