【非住宅木造】住宅で培ったノウハウと仲間との“チームビルディング”で実現

長野県須坂市を拠点とする社員2人の小規模工務店・池田住建企画が、地元製造業の企業から依頼を受け、延べ床面積約1000㎡の新社屋を木造で実現するプロジェクトに挑んでいる。

2025年5月に着工し、26年4月の完成を目指して工事が進む。社長の池田安信さんは、住宅をなりわいとする工務店が自社初の非住宅木造にチャレンジできた理由として“チームビルディング”を挙げる。

池田さんが、新潟県のコミュニティ・住学の活動に参加するなかで築いてきた人脈や、高度な知見・スキルを持つ専門家、実績が豊富で現場管理に精通する地元ゼネコン（総合建設業）が同社の大きな挑戦を後押しした。【編集部　関卓実】

2026年4月の完成を目指して木造の新社屋建設工事が進む現場	木造新社屋の完成イメージパース。外壁は全面、長野県産の無垢スギ板材をよろい張りにして仕上げる

木造で新社屋を建設するのは、上下水道用・工業用ゴム製品製造の興和ゴム工業。建物は木造平屋一部2階建てで、延べ床面積998.48㎡。事務スペースや試験室、検査室のほかに気軽にミーティングなどもできる食堂ホールや多目的スペースなども設ける。事業費は4億円余りで、建物規模も金額も池田住建企画にとっては経験のない“未知の領域”だ。

使いやすく可変性の高い無柱の大空間を実現するため、ウッド・ハブ合同会社（新潟県三条市）がオープンソースとして提供する「WHフレームシステム」（構法）を採用。平屋の検査室と試験室については、それぞれWHフレームの平行弦トラスタイプにより14.56mの大スパンを実現。一部2階建ての事務スペース・食堂ホール・多目的スペースについては、張弦トラスタイプのフレームによって9.1mスパンを飛ばす。

社員が来たくなる環境づくり
快適・省エネ・耐久性高める

「社員が会社に来たくなる環境づくり」を掲げるクライアント（興和ゴム工業）からは、「木の温かみが感じられ、社員が快適で健康に働ける職場空間をつくりたい」という強い希望があった。これに対して池田さんは、自社がこれまで家づくりで培ってきた技術的なノウハウや施主家族への思いをそのまま生かすことが、クライアントの希望をかなえることにつながると確信。施設規模は大きいものの、木造住宅の考え方やプランニング手法、技術をベースに据えた。

壁の断熱はネオマフォーム80㎜厚を充填。屋根の断熱については垂木間に同80㎜厚を充填したところに硬質ウレタンフォームA種1Hを80㎜厚で吹き付け。床を設けた事務スペース・食堂ホールに関しても、基礎の立ち上がり（内側）と土間全面に同じ硬質ウレタンフォームを60㎜厚で吹き付ける。窓については全て樹脂サッシ・ペアガラス（LIXIL・EW）を採用した。

池田さんは「屋根断熱のウレタン吹き付けを加味しない状態でBEI0.67を達成しているので、かなり高性能な建物と言える」と説明。また・・・

この記事は新建ハウジング11月30日号2〜3面（2025年11月30日発行）に掲載しています。