全国建設業協会(全建)が10月6日に公表した2025年度の「労働環境の整備に関するアンケート」結果(PDF)によると、直近1年で職員の賃金を引き上げた企業が9割近くに上った。このうち「基本給・一時金とも引き上げた」は39.9%、「基本給のみを引き上げた」は46.6%だった。技能者労働者に限ると、賃金を「引き上げた」または「引き上げる」との回答が83.7%となっている。
下請企業との契約で用いる労務単価については、「引き上げた」との回答が72.8%に。さらに、「引き上げていない」と答えた企業のうち55.3%は、今後「引き上げる予定」だと答えている。個別意見では、「賃金の引き上げに伴う支援を充実させてほしい」「政府主導で労務単価を引き上げてほしい」との意見があった。

直近1年間での職員の賃金
同調査は、会員企業の働き方改革に関する実情や取組状況を把握するために実施したもの。調査は7月1日時点の内容で、1933社から回答を得た。
労働時間短縮の取組に効果
月当たりの平均残業時間は、現場・事務所ともに「15時間未満」が最多だったが、現場の方が長時間となる傾向が見られた。さらに、技能者よりも技術者の方が平均的に労働時間は長くなっている。

月当たりの平均残業時間
時間外労働が多くなる理由は、現場では「作成する書類が多すぎるため」(69.5%)、「人員が不足しているため」(67.4%)といった回答が目立った。個別意見では、「個人の能力向上には時間が必要。労働時間だけを抑制しても労働者や企業にとってプラスにはならない」との声が聞かれた。
労働時間を短くするための取り組みとその効果については、現場では「週休2日モデル工事」「労働時間の適正管理」「定時退社の呼びかけ」「経営トップによる声かけ」などを実施した企業が多く、その大半が取り組みの効果を「実感できた」と回答している。

労働時間を短くするための取組の効果
建設ディレクターの活用進む
職員の職種の構成は、全職種では「技術者」が53.2%で最多となったが、女性職員に限ると「事務職員」が58.7%で最多となっている。女性職員に占める「技術者」の割合は21.1%、「技能者」は2.1%、技術者をバックオフィスで支える「建設ディレクター」は8.4%。採用した女性職員の職種も「事務員」が46.3%で最も多く、次いで「技術者」(30.8%)、「建設ディレクター」(10.5%)の順となった。
「建設ディレクター」は、技術者の書類作成や関係各所との調整といった業務を専門的に担う職種で、現場技術者の負担軽減策として、近年活用が進んでいる。前述の労働時間を短くする取り組みに関する調査でも、「建設ディレクターの活用」による効果を「実感できた」(9.9%)との回答は、「できなかった」(3.2%)の約3倍となっている。
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