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若手設計士のみなさんこんにちは。
前回は住まいの外観を見ましたが、今回は外の場所について考えてみましょう。
これまでにも何度か触れましたが、内部とは異なる外ならではの特徴と魅力を改めてじっくり考えてみます。
囲いを作ってプライバシーと開放感を両立しよう
住まいの外が内部と大きく異なるのは、季節や天候、時刻などの自然条件に左右されることです。そしてもう一つは、常にむき出しの存在であるだけに、プライバシーの確保が特に求められることです。
一方で、自然条件を伴うという性質は外の魅力を引き出してくれる最大の要素でもあります。そしてプライバシーの確保は、外が持つ宿命的な課題と言えるかもしれません。この両者をどう整合させてゆくか?
今回まず紹介したいのは、囲われた外が持つ魅力です。下の住まいをご覧ください。

【写真1(左)・2(右)】柿生の家 設計・礒健介/礒建築設計事務所(写真・西川公朗)
広々としたLDKの先に、板塀で囲われたテラスが見えます。板塀の向こうは前面道路。この板塀は高させいぜい1.8メートルほどですが、プライバシーの確保には十分に役立っています。
そしてこの板塀があるおかげで、住まいの内部は安心して外に解放されています。外の一部を囲うというシンプルなしつらえですが、実はこれほど大きな魅力をもたらすのだと感心します。
もう一軒の囲いを紹介しましょう。下の住まいでは外壁に合わせたデザインの板塀でお庭を囲っています。決して高くはなく1.2メートルほどですが、囲われたお庭の安心感とまとまり感は見事に演出されています。
プライバシー確保のための塀というといかにも高くしてしまいそうですが、実際は決してそれほど高くしなくて良いのです。囲われて周囲から守られていると感じられれば、それだけで囲いは十分頼もしい味方になってくれます。


【写真3(上)・4(下)】可児の家 設計・本田恭平/mononoma(写真・山内紀人)
ところでこの2軒の住まいの写真は、いずれも室内から撮られています。中から外を見た状態なんですね。
せっかく庭を囲ったのだから、そこに向かって室内を思い切り開放しています。そうすることで内と外とは強く一体化して、住まいをより広々として明るい場にしてくれています。囲いと開口部は名コンビと言えそうですね。
家をくり抜いて囲われた外を作る
では密集した住宅地の中に敷地があって、なかなか囲いだけでは対応できない、そんなときにはどうすれば良いでしょう。
そんなときには住まいの一部をくり抜いて、思い切って外にしてしまう。こうすると密集した環境下でもプライバシーに恵まれた安心な外を手に入れることができます。
下の住まいでは、2階の大窓の奥がなんと外なのです。清楚な切り妻の「おうち」形外観なだけに、この「くり抜かれた」感は非常にインパクトがあります。
まるで一室の屋根を外したような感じです。庭というよりは、もはや外の「部屋」ですよね。周囲からの視線はまるで気になりません。これもまた、内と外とが極限まで一体化した魅力と言えそうです。


【写真5(上)・6(下)】妙蓮寺の住宅 設計・織田遼平/織田建築設計室
下の住まいでも同様の演出が見られます。右側の窓の奥は実は空中テラスなのです。
決して大きな外ではないけれど、室内を驚くほど明るく照らし出してくれます。


【写真7(上)・8(下)】大和の家 設計・礒健介/礒建築設計事務所(写真・西川公朗)
ここでもう一つぜひ話したいことがあります。それは住まいが夜になって持つ表情です。
下の2枚の写真は上で紹介した住まいの夜景ですが、くり抜かれた外がとても明るく照らし出されていることがわかります。
帰りの夜道を歩いていて自宅の灯りが見えてくると、何とも言えない安心感やくつろぎを抱きますよね。私はいつも思うのだけれど、この感覚は住まいを作る上でとても大切なものなのではないでしょうか。
くり抜かれた外は夜になるとそこ自体が巨大な灯りになって、住み手の帰路を見守ってくれるのです。

【写真9】妙蓮寺の住宅 設計・織田遼平/織田建築設計室

【写真10】大和の家 設計・礒健介/礒建築設計事務所(写真・西川公朗)
外を覆って室内とつなげ、雨までも楽しんでしまおう
外を覆うこともまた、囲いと並んで外を魅力的にしてくれる切り札です。
下の住まいでは広いウッドデッキを設け、その上を屋根で覆っています。雨の日や梅雨どきなどの季節でも、気軽に外に出て楽しむことができます。


【写真11(上)・12(下)】居場所の家 設計・工藤健志/建築設計事務所RENGE
下の住まいにも深い軒に覆われたすてきなテラスがあります。夏の暑い日差しを避けながら景色や風を味わうのに絶好の場所です!
眼前の景色はうらやましいほどすてきですが、雨の日にここにたたずんで雨景を味わうのも情緒があって楽しそうですね。雨も立派な自然要素。覆いは、自然により親しむためのすばらしいしつらえなのです。


【写真13(上)・14(下)】巾の家 設計・本田恭平/mononoma(写真・山内紀人)
日本は雨の多い国です。雨はとかく嫌われがちだけれど、季節や時間によっては雨の景色と香りはなかなか情緒があるものです。
でも自分が濡れてしまったり傘が必要だったりしたら、やっぱり雨は鬱陶しい。ならば雨が降っていても濡れなくて安全なところにいれば、雨の情緒を味わうゆとりは必ず持てると思うのです。
そんな意味で、雨の日でも気軽に出られる外は日本の気候風土によくマッチした、すてきなしつらえだと思いませんか?
覆いだってプライバシーを守ってくれるのです
覆いはまた、プライバシーを守ってくれるしつらえでもあります。下の写真をご覧ください。
この住まいでは、家の中心となる大切なテラスは道路に面しています。けれども頭上を軒が深く覆っているため、軒下は陰になってほとんど様子が見えません。これもまたプライバシーを守る一つの解決策なのですね。お日さまは明るさを提供してくれます。そして同時に、陰という「潜み」をも提供してくれるのです。


【写真15(上)・16(下)】清須の家 設計・本田恭平/mononoma(写真・山内紀人)
住まいを横にくり抜いて覆われた外を作ろう
家の一部をくり抜いて外を作り出すとき、頭上でなく横をくり抜くと、覆われつつ室内と一体になったすてきな外ができあがります。
下の住まいはすばらしい景色に恵まれていますが、2階の壁をくり抜くことで外をグッととり込んでいます。室内から撮った写真を見ると、この外は覆われて囲われ、まるで室内の続き間のようです。そして同時に景色を切り取って、絵画のように見せてくれます!


【写真17(上)・18(下)】空中縁側の家 設計・森田葵/あおいも(写真・17:山内紀人, 18:森田葵)
今回は住まいの外を囲うことと覆うことで、内外一体の魅力を発揮している例を紹介しました。そしてまた、外のおかげでプライバシーをも確保できていることがわかりました。
次回もまた、いろいろな住まいの外について考えてみたいと思います。どうぞお楽しみに!
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