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若手設計士のみなさんこんにちは。
前回に引き続き、今回も住まいの境界線廻りをすてきにつくった作例を紹介してまいりましょう。
玄関へのアプローチを工夫して
すてきな「引き」をこしらえよう〈その2〉
下の写真は前回の写真3で紹介した住まいです。この住まいでは玄関を道路側でなく奥に設け、アプローチを長―くとって「引き」を作り出しています。前庭には土の地面をふんだんに残し植栽をたくさん植えて、緑豊かなアプローチウェイを演出しています。

【写真1,2,3,4】赤塚の家 設計・古谷野裕一/古谷野工務店 造園・蓑田真哉/zoen(写真・西川公朗)
下の写真も同じ作者による住まいです。この住まいは角地に建っていて、玄関はちょうど角に面したところにあります。道路からはわずかな距離ですが、アプローチの前庭をすてきな舗装と植栽で彩って、心理的な「引き」が十分に感じられるように演出しています。

【写真5】武蔵小金井の家 設計・中島行雅/エータスデザインラボ+古谷野裕一/古谷野工務店 造園・蓑田真哉/zoen(写真・西川公朗)
玄関を敷地のどこに設けるか?利便性を第一に考えると、玄関をできるだけ道路の近くに設けたくなります。そして門扉を開けるとその真正面に玄関がくるように配置する。もっとも合理的なレイアウトですよね。
でもこのとき、例えば玄関の位置を門扉から少しずらしてみる。そして門扉からドアに至るまでの距離を少しでも確保する。まっすぐストンと玄関に入れるのでなく、曲がるという行為を意図的に作り出す。曲がる場所には、小ぶりでかまわないから庭木を1本植えてみる。そのような演出によって「引き」はけっこう確保できるものです。
「引き」は物理的な距離だけでなく、心理的な距離をも作り出してくれます。わずかでも「引き」があることで、住まいの奥行き感は確実に増してくれるのです!
さて、下の写真は玄関アプローチに介在物を設けて奥行き感をも演出した例です。
この住まいは以前にも紹介したことがありますが、このアプローチと玄関の演出は、思わず何度でも紹介したくなる見事さなのです。



【写真6,7,8,9】国分寺の住宅 設計・青木律典/デザインライフ設計室(写真・長田朋子)
この住まいも旗竿敷地に建っていて道路からの引きは十分な距離がありますが、作者はアプローチウェイの舗装をあえてまっすぐにすることで、視覚的な距離感をさらに強調しています。そして玄関の手前に離れの小屋を置くことで奥の景色の一部を隠しています。「奥はどんなふうになっているんだろう」と、玄関へと至る期待感を募らせるすてきな演出です。
そしてその玄関も、ご覧のように透けた作りになっている。玄関ドアでアプローチが終わってしまうのでなく、玄関を超えたさらに奥にまで世界を広げています。そして視線の先に1本のシマトネリコの木。見事ですね!
・・・それにしてもこの小屋、まるで茶室の待合腰掛けのように見えますね。
隣地との境界をすてきにつくる
犬走りもまた積極的にすてきな場所にする
道路境界線の演出について書いてまいりましたが、次に隣地境界線廻りをすてきに演出した例を紹介いたしましょう。
旗竿敷地に住まいを計画しますと、隣地境界線はとりわけ長くなります。そしてアプローチウェイもまた長いものになります。これはハンディキャップと考えられがちですが、実は設計者にとっては腕の見せどころでもあるんですね。住み手、お隣さん、そして道行く人々に愛されるような外の場所をどのように作るか。ハンディは時として、新たな魅力を考え出す良いきっかけにもなってくれるのです。
下の住まいは旗竿敷地のアプローチウェイを植栽で魅力的に演出した例です。周囲を隣家に囲まれてとかく閉鎖的になってしまいがちなところですが、植栽の緑と柔らかさはこうした場所に何とも言えない親しみと潤いをもたらしてくれるものです。隣地の駐車場に面するフェンスも可能な限り高さを抑えて、植栽が小さな景色としてなじんでくれるよう配慮しています。

【写真10,11】さがみ野の家 設計・礒健介/礒建築設計事務所(写真・西川公朗)
そして玄関へと向かって行きますと、ご覧のようなすてきな庭が視界に入ります。アプローチウェイの小さなスケールを経たあとだけに、このお庭はより広々と、より輝いた場所になってくれています。

【写真12】さがみ野の家 設計・礒健介/礒建築設計事務所(写真・西川公朗)
外部の演出だけでこれだけ作り込める作者の力量もすばらしいですが、同時に私たちは、外部もまた住まいのすばらしい構成要素であることを改めて実感させられますよね。
下の写真は前回でも紹介した「小平の住宅」です。写真は隣地境界線に面した部分です。一般に「犬走り」と呼ばれている部分ですね。
犬走りはどちらかというと住まいの脇役のイメージがありますが、この住まいを見ていると脇役どころか、立派な小庭として住まいに溶け込んでいます。奥にはテラスがあって、小径が柔らかく導いています。いかにも奥に歩いて行きたくなるしつらえですね!

【写真13,14】小平の住宅 設計・青木律典/デザインライフ設計室(写真・長田朋子)
下の写真も前回紹介した住まいです。角地に建つ家ですが、裏側の隣地境界線に沿って、これもまた見事な小庭が作られています。奥にはアトリエへの入り口があってこの庭は重要な来客動線ですが、行き来するのが楽しみで仕方なくなりそうな庭です。


【写真15,16】町保の家 設計・前原香介/前原香介建築設計事務所(写真・園田賢史)
外構の予算的な苦しさをなんとか克服して
すてきな外をつくろう
さて、今回まで数回にわたって住まいの外の場所を紹介してまいりました。
これらの場所は一般に「外構」と呼ばれている部分ですが、外構と聞きますときっと「うーん、なかなか予算が回せないんだなあ」と思われる方もいらっしゃると思います。
そう、どうしても建物に主な予算をかけなければならないため、当初から外構に計画的に予算を充てるのはなかなかしんどい。これは設計施工に関わる人たちに共通した本音なのではないでしょうか。
けれども、もしこれまでのさまざまな作例をご覧になって、ほんの少しでも外構を豊かにしようと思っていただけたなら、それだけで大変うれしいです。
1本の低木でもいい、1つの石でもいい。1枚の木の板を地面に敷くのでもいい。こうしたらきっと楽しいかも、という工夫をぜひしてみてほしいです。その1つの物が外の場所を脇役から主役に引き上げてくれる可能性はとても高いのです。
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