帝国データバンク(東京都港区)が発表した「全国企業休廃業・解散動向調査」によると、2025年1月から8月までに全国で休業・廃業・解散した企業は4万7078件に達し、前年同期比で約4000件(9.3%)増加した。これにより、年間では初めて7万件台に到達する可能性が高まっており、2016年の現行基準開始以降で過去最多を更新する見通しとなっている。
休廃業企業のうち、総資産が債務を上回る「資産超過型」は64.1%と2016年以降最高を記録した。一方、休廃業する直前期の決算で当期純損益が黒字だった企業の割合は49.6%と初めて5割を下回り、過去最低を更新。黒字かつ資産超過の状態で休廃業した企業は全体の16.2%にとどまり、損益面で悪化した企業が多い傾向がみられた。
背景としては、2020年から2022年にかけて政府が措置したコロナ禍での持続化給付金や雇用調整助成金による資金繰り支援の終了があげられる。加えて、物価高騰、代表者の高齢化、後継者不在など複合的な経営課題も無視できない。
調査では、事業再生ガイドラインや廃業支援策の充実により、余力があるうちに事業を畳む「円満な廃業」が広がっていると指摘する。さらに将来性が見通せず、さらなる業績悪化が避けられないと判断した中小零細企業が、手元資金に余裕があるうちに会社を畳む、余力ある「あきらめ廃業」が増加した可能性があるとした。
休廃業・解散時の経営者年齢は、2025年1-8月平均で71.65歳と前年から微減。最も休廃業が多い年齢も、2025年は8月までの集計で74歳と、前年同期に比べて1歳低下した。年代別では「70代」が39.6%と最多ながら前年から低下し、「50代」「60代」「80代以上」の割合が上昇。現役世代で市場からの退出を決断した企業が増加している。
業種別では建設業が5938件で最多となり、2016年以降最多を記録する可能性がある。このほか、サービス業と製造業では前年比2割超の増加率を記録した。
現時点で2025年の企業倒産件数は12年ぶりに年間1万件台に達する見込みだが、休廃業・解散の伸び率はそれを上回っており、企業の退出が加速している。調査では、中小企業が事業継続か廃業かの選択を迫られるケースが増えているとし、M&Aなどを活用した『前向きな廃業』の考え方が今後さらに浸透すると予測。その上で「経営者保証ガイドラインの改定やサプライチェーン事業承継の導入など、連鎖廃業・倒産のリスク軽減に向けた取り組みも同時並行で進めることが求められている」と結んでいる。
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