経済産業省・中小企業庁はこのほど、中小企業におけるM&A施策の方向性についてとりまとめた「中小M&A市場改革プラン」(PDF)を公表した。この中で、M&A成立後の買戻しを可能とするなど、経営者の不安を払拭する仕組みの構築や、中小M&Aアドバイザー向けの資格制度の創設などが盛り込まれた。
近年、中小M&Aの市場が急速に拡大して支援機関が増加する一方で、質の低いM&A仲介事業者や譲り渡し側の現預金を引き抜く買手の存在といった課題も表面化している。こうした状況を受け、同省は有識者検討会で今後講じるべき施策を検討。「譲り渡し側」「譲り受け側」「中小M&A市場」の3つの軸から、市場の健全化に向けた取り組みを包括的に実施する。
継承意向未定の法人26万者
同省の調べによると、休廃業・解散件数に追い込まれる企業は近年、急激に増えている。後継者不在の中小企業はたとえ黒字経営だったとしても、後継者がなければ廃業などを選択せざるを得ない厳しい状況にある。現状として、経営者が60代以上で事業承継の意向が未定の法人企業は約26万者に上り、M&Aのさらなる拡大が求められている。
一方、後継者が不在でも、M&Aなどによって第三者に継承できれば、廃業による経営資源の散逸を回避できる。さらに経営者年齢の若返りやシナジー効果の発揮により、売上高の増加や生産性が向上するなどの効果も期待できる。実際、統計上でも経営者年齢が若いほど売上高を成長させた企業の割合が高いといった結果も出ている。

M&Aを実施した中小企業の業績
譲渡額相場を把握しやすく
今後の施策の方向性として、譲り渡し側に係る施策では、経営者のM&A後の事業への不安感を軽減するための仕組みの確立を検討する。雇用維持や経営者保証の解除といった契約内容を担保するため、「中小M&Aガイドライン」で示す最終契約のひな形を改訂。M&A成立後に契約違反があった場合に譲り渡し側の意思で買戻しを可能とする条項を新設する。
また、M&A検討前に譲渡価額の相場を把握するための施策として、公認会計士や税理士など士業専門家による精査を推進。中小M&Aの取引データを基にした業種ごとの譲渡対価相場が把握できるツールを作成・公表する。
譲り受け側に係る施策では、小規模案件や個人による継承など、マイクロ・スモール案件に対応するPEファンドへの支援を強化。支援機関による優良な譲り受け側の掘り起しなども推進する。
中小M&A市場に係る施策では、中小M&Aアドバイザー向けの資格制度の創設を検討。将来的には豊富な知識や実務経験を有するアドバイザーを対象とした、上級資格の創設も視野に入れる。さらにアドバイザーの倫理観向上のため、定期的な講習の受講を要件とした登録制度も検討する。

日本におけるPEファンドの投資状況
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