経営者の高齢化が進む中、後継者の不在を要因とする“後継者難倒産”が増加傾向にある。その一方で、小企業の中には「自分の代で終わりに」「生涯働き続けたい」と考え、事業を次世代に引き継ぐことにこだわらない“生涯現役”の経営者も存在する。
日本政策金融公庫・総合研究所が1月16日に公表した「小企業の事業継続に関するアンケート」結果(PDF)によると、高齢の経営者のうち、生涯現役の意向を示す経営者は全体の約2割を占め、「建設業」「小売業」「製造業」などで、特に割合が高いことが分かった。「建設業」では、「生涯現役経営者」が全産業中最多の21.4%を占め、「引退希望経営者」は21.1%、「承継希望経営者」は19.0%だった。

調査対象の分類(資料より引用)
同調査は、2014年以前に創業し、経営者の年齢が60歳以上の企業1万4216社(有効回答数:6354社)を対象に実施。調査期間は2024年9月。
「創業者」「自宅で経営」が多数
生涯現役経営者が経営する会社の状況をみると、当人が「創業者」(66.3%)であり、「個人(事業主)」(62.3%)である割合が高かった。従業員数は、「経営者のみ」(23.2%)、「2人」(35.6%)、「3~4人」(24.5%)の割合が高く、引退または承継希望経営者よりも従業員数が少ない傾向が見られた。建設業では親方や一人親方なども、これに該当すると思われる。
主な事業所の場所については、「自宅と兼用(生活空間と非分離)」(24.6%)、「自宅と兼用(生活空間と分離)」(24.0%)の割合が、引退・承継希望経営者よりも高い傾向が見られた。これらの結果から、生涯現役経営者の多くは小規模な事業を営み、事業承継の必要性が低い様子もうかがえる。

主な事業所の場所(資料より引用)
生活苦も“生涯現役”の要因に
生涯現役経営者が経営を続けている理由(複数回答)については、「生活費をまかなうため」(77.2%)、「借入金の返済が残っているから」(56.7%)などの回答が多く、「健康を維持するため」(35.6%)、「仕事が生きがいだから」(33.8%)など、ポジティブな理由がそれに続いた。
事業収入が世帯の収入に占める割合は、「100%(ほかの収入はない)」が31.6%で最も多く、「75%以上100%未満」も27.5%を占めている。生計の状態は、「あまり余裕がない」(47.8%)、「まったく余裕がない」(29.3%)が合わせて約8割を占めた。
さらに「新たな収入や援助がないと生計を維持できない」との回答も54.7%を占めていることから、生涯現役経営者の中には、経済的な理由からやむを得ず働き続けている人も少なくないと考えられる。

現在の生計の状態(資料より引用)
事業の売却・譲渡をしない理由については、「事業の規模が小さいから」が67.8%で最も多く、次いで「成長が見込めない事業だから」(36.1%)、「経営状態が良くないから」(33.6%)が多かった。「不動産を自宅と兼用しているから」の回答も19.6%を占めている。
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