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性能向上リノベの会は2024年度のサステナブル建築物等先導事業(省CO2先導型)において、「ZEH水準を超えた 断熱 ・省エネ改修プロジェクト」で採択を受けた。
改修による性能向上(断熱等級6以上/一次エネルギー消費量削減率30%以上/上部構造評点1.0以上)に加え、改修前後の実測(室温、エネルギー消費)も交付の要件となっている。性能向上リノベの効果を明らかにする実測方法を、紙上で紹介していく。【編集長 荒井隆大】
密着!「前先生のサーモ撮影実践講義」
6月19日、前真之・東京大学大学院准教授を講師に、神奈川県内のリノベーション現場でサーモカメラによる撮影の講義が行われた。前先生直伝、「地球沸騰化時代の厳しい暑さを可視化する」ためのポイントを紹介しよう。
point.1 冬は足元、夏は頭上を撮るべし!
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| 熱せられた屋根・天井を撮影する | ||
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| 頭から足まで全身が入るように撮る | ||
前先生 サーモカメラは冬の寒さを可視化するツール、というイメージも強い。冬の寒さを可視化したいなら足元(床など)を撮ろう。足元から冷たく、重い空気が侵入してくる様子がわかる。
対して夏の暑さを伝えるには、頭上の空間や2階で撮影するのがよい。夏、70℃近くまで熱された無断熱の屋根・天井から降り注ぐ放射熱がサーモカメラで可視化される。撮影時は誰か人(足から頭まで全身)に、画角に入ってもらおう。
人間の体温に対して周辺の温度がいかに高いのか、相対化して見せることができる。
point.2 レンジ固定でどの現場でも「同じ温度は同じ色」に!
前先生 オートレンジモードで撮影している人も多いが、これだとちょっとカメラを動かすだけで温度の上限・下限がコロコロ変わってしまう。
改修前後で断熱の効果を比較するためのサーモ画像を撮りたいなら、温度のレンジを統一しよう。どの現場でも、同じ温度は同じ色で表示されるようにしたい。夏なら最低を10℃、最高を40℃に設定するのがおすすめ。体感も重要。「この色になるときの体感はこんな感じだ」と、画像と体感を紐づけてほしい。
サーモ画像を使って説明するにしても、画像を見せている本人が納得していれば説得力は上がる。ただ、レンジ固定だと高温の部分はホワイトアウトしてしまうので、適宜オートレンジモードで撮影してもよい。とにかく「人体よりも周囲の温度が高い」ことを伝えるべし。

オートで撮った場合とレンジ固定した場合の違いが下の2枚の画像だ

左:オートで撮ると30℃以上あるのに青く見えている 右:レンジを固定すると同じ温度が同じ色に写る。夏は下限を10℃、上限を40℃に設定
point.3 太陽の位置を三次元で意識する
前先生 窓の日射遮蔽などを考えるときは、三次元で太陽の位置がわかるアプリ(Sun Seekerなど)を使い、太陽がどこにあるのかを意識しよう。

Sun Seekerなどで太陽の位置を確認する
今日は太陽がほとんど夏至の位置、この家の真上にある。太陽の位置を考えながら1階南面の窓を見てみると、夕方には日射が入りそうだとわかる。
2階の窓は隣に建物(遮蔽物)がないことも多いので、各方位で日射の影響を入念に調べたい。高断熱住宅では、秋、10月ごろに太陽高度が下がってくると日射取得量が増え、かえって暑くなってしまうことがあるし、方位が西に振れていたりする場合も要注意。

周囲の建物をサーモカメラで撮影すると、屋根がかなりの高音になっているとわかる。窓を開けると熱せられた地面や隣家の屋根からの放射熱が侵入する。窓を開けて通風を確保することは、ガラスによる放射熱の遮断効果がなくなるのと同じ
point.4 エアコンの吹出温度と湿度
ここでは階段室のエアコン1台で冷房している。エアコンの吹き出し口の温度を測ってみるとおおよそ16~17℃。断熱性が低く、日射遮蔽が不十分な家だと、エアコンが吸い込む空気の温度が高いので、吹き出し温度は10℃以下になっていることも多いが、吹き出し温度が低いと湿度も下がる。
ここで実際に湿度を測定してみると、絶対湿度は約14g(相対湿度で約67%)。ちょっと高めだが、体感としてはさほど気にならないのでは。冷房を連続運転しているので壁や床、天井の表面温度も26~27℃まで下がり、放射温度が低くなっているせいだろう。湿度を下げるには余計な熱を取らなくてはいけないのでエアコンの消費電力も増加する。湿度にこだわるのはエネルギーの観点からはリスクだと言える。

エアコンの吹き出し口の温度を測る。低いと湿度も下がる。連続で冷房を運転していると壁や床、天井の温度が一定になる
この記事は紙面ビューアー(2025年7月10日号8~9面)でもご覧いただけます。
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