
「どこでも誰にも良き住まいを――」、略して「どこ誰」。これを実現するには何が必要なのか。本連載では、そんな住まいの理想を掲げて、前真之先生(東京大学大学院准教授)が全国の工務店や多様なステークホルダーに突撃取材。「健康で快適に暮らせる、十分な性能の家をすべての人に届ける」ことの重要性を説き続けている前先生とともに、「十分な性能の家」の普及に立ちはだかる課題とその解決策を探ります。
連載第2回は、長年大家業を営む埼玉県の岡野敏彦さんに、空室リスクや管理の実態、性能向上への取り組み、そして地域工務店との連携の可能性について伺いました。かつて賃貸住宅は狭い・うるさい・寒いのが当たり前でしたが、今はそんな住宅は入居者から敬遠されがちです。省エネ基準の義務化や補助金の後押しもあり、オーナーの間でも高性能賃貸住宅への関心が着実に高まっているといいます。
大家業の背景と経緯
前:岡野さんが大家業を始めた経緯を教えていただけますか?
岡野:賃貸の大家には、土地を代々受け継いでいる地主系と、投資対象として収益を重視する投資系の2タイプがあります。私のような地主系大家は土地を守ることが一番大事で、地域への貢献にも関心があります。子どもの頃から実家にアパートがあり、将来は自分が継ぐものと準備していました。不動産が嫌いではありませんでしたし、高性能・高断熱の建物に触れる機会もあり、「自分でもこうした賃貸を提供したい」と思うようになりました。
短期的な売買で利益を得ることは考えず、5年、10年と長期にわたって安定して運用できることを重視しています。入居者の不満は「狭い・うるさい・寒い」が多いので、それをなくすように意識しています。入居者が快適に暮らせる方が結果的に経営も安定する、と考えて経営に取り組んできました。
入居者との関わり方
前:物件の管理は、業者に委託されているのでしょうか?
岡野:私は基本的に自主管理で、入居者と直接つながっています。小さなトラブルでも遠慮なくLINEで連絡してもらっているので、管理会社を入れた場合にありがちな伝言ゲームのような誤解を避けられます。
以前、入居者から「大家さんとの関係がこんなに近いのは初めてだ」と言われたことがあります。確かに少し珍しいかもしれませんが、信頼関係を築く上では有効だと感じています。
信頼があれば、設備の不具合でも急を要さないものは「1週間待ってください」と伝えれば、入居者も応じてくれます。逆に、電気や水道などは即対応します。50年以上大家業をしてきましたが、入居者との信頼関係のおかげで大きなトラブルはありません。

岡野さんが経営する6棟の戸建て賃貸住宅。1軒以外は100㎡超の広さ。アルミ樹脂複合サッシは防犯仕様のLow-Eガラス。床はウレタンフォーム100㎜、天井・壁は高性能グラスウール24K120㎜の高性能賃貸
大家業の課題
前:賃貸の管理というと、家賃の未納などトラブルが多くて大変そうなイメージがあります。
岡野:確かに古い物件ではトラブルもありました。築年数が経つと入居者層も変わり・・・
この記事は新建ハウジング9月30日号16面(2025年9月30日発行)に掲載しています。
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