木造でポジション築き、強いブランドに
デザイン・性能・木造など”ならでは”の提案も継続
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阿部 一雄 阿部建設 |
修行先企業を経て、1989年阿部建設入社。一級建築士。住宅・施設建築営業および設計を主に担当。2002年オートバイレース中の事故により車いす生活者となる。創業100周年の年(2005年)に5代目代表取締役社長に就任。工務店3社で設立した名工家の代表理事となり、職人教育・職人共有などの施策を実現。日本バリアフリーコーディネーター協会やバリアフリー総合研究所UD-ラボ東海運営 |
当社の施設建築部門は年間7棟程度の受注、全体に占める売上の割合が3割ほどで、ここ数年は安定的に推移しているが、事業環境の変化は目まぐるしく、それにあわせて戦略を再構築して取り組んでいる。
メインターゲットは、木造を中心に工事額8000万円~2億円程度のレンジ。これは、大手・中堅ゼネコンは規模(工事金額)が小さいために積極的に参入せず、小規模な工務店は物件の規模が大きいことや、現場に監理技術者(一級建築士もしくは一級施工管理技士)を配置しなければならないなどの理由で、あまり進出してこないという想定による。
数年前に施設建築を本格的に展開し始めたころは、木造に的を絞り、長年にわたって住宅建築で培ってきたデザイン性の高さや高気密・高断熱の技術による快適性、国産材を使用することによる脱炭素社会構築への貢献性などを前面に押し出して、社会福祉施設などを中心に受注を伸ばした。
しかし、そこまで“ニッチ”に対象を絞り込んでしまうと、安定的な受注や持続的に事業として成立させることが難しいということがわかってきた。そのため現在は、木造施設をメインとしながらも、鉄骨造に関しても3種類のシステム建築を導入して、幅広い需要に応えられる体制としている。
倉庫や工場などは、技術的には木造で問題なく対応できるものの、例えばスパン20mの無柱の大空間をつくるとなると、コスト的に鉄骨造が優位になってくる。施設のプランや地盤状況によって3つのシステムから適切な工法を選択して提案する。
木造に関しても、在来工法にこだわらずに、ツーバイフォーやSE構法など、事業者(発注者)の要望に応じてケースバイケースで提案している。利益重視の事業者に対する提案では、例えば木造と鉄骨造のコストの比較など、いくつかの選択肢を提示することが受注のカギとなる。
施設受注のポイント
当社の場合、私が車いす生活者である経験を生かし木造施設の福祉系施設も受注している。最近では、在来工法によって総工費2億円ほどの看護小規模多機能型居宅介護施設の施工を受注し、今年3月に完成させた。1階に看護小規模多機能、2階にグループホームが入る施設で、延べ床面積は500㎡程度。現在も、生活介護とショートステイ、クリニック、放課後等デイサービスの4つの事業を行う複合施設をツーバイフォーで新築している。こちらは設計・施工で、受注額は1億数千万円程度。2階建ての延べ床面積450㎡の建物だ。
営業的なポイントは・・・
続きは「あたらしい工務店の教科書2025」P.55〜でお読みいただけます。
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