若手設計士のみなさんこんにちは。
今回は窓の配置について考えてみましょう。
窓を設けるとき、なんとなく並べてしまうと部屋全体がどことなく平凡な感じになってしまいます。けれども窓の持つ本来の存在力を思うと、なんとか魅力を引き出せるように配置したいものです。
そこで、窓配置のさまざまな工夫で場所の魅力を引き立たせた例を紹介しましょう。
造作や仕上げと窓を一体化させてみよう
下の写真はある住まいのLDKの様子です。横長の連続窓が外の斜面を映し出したすてきな部屋ですよね。
ところでよく見ていただくと、窓の下の腰壁は他と異なる仕上げなのがわかります。またこの部屋は垂れ壁にグルリと囲われていますが、窓の上端はピタリと垂れ壁に合っています。
ただ窓を開けるだけでなく壁とセットでデザインすることで、窓の存在感がますます高まっています。景色の美しさも相まって、窓が部屋の魅力に大きく関わっていることがわかります。

【写真1,2】猫ヶ洞の家 設計・藤井雄一朗/アルヒフト建築研究所
また、下の寝室には勾配天井が用いられていますが、その天井にスッと取り付くようにしてパノラマ窓が設けられています。天井という部位に高さを合わせることで、この部屋の造形に一体感をもたらしています。
また窓の下端はベッドのヘッドボードに合わせてかなり低い位置まで下ろしています。床から750ミリほど上がった位置でしょうか。ベッドに横になっていても奥の机にいてもそのまま外の景色に意識が向く、すばらしい高さですよね。

【写真3】清眺台の家2 設計・本田恭平/mononoma(写真・山内紀人)
下の写真は同じ作者による住まいのリビング・ダイニングですが、同様なしつらえが見られます。
ちょっとわかりにくいのですが、この部屋も勾配天井です。そして天井にスッと取り付いて大きな窓があります。窓の下には造り付けの本棚が設けられています。
こうして天井・窓・本棚がセットになって、まるですてきなオブジェのように部屋を彩っています。下側の写真にはその様子がよく表れていますよね。

【写真4,5】可児の家 設計・本田恭平/mononoma(写真・山内紀人)
このように窓の位置を壁や天井と揃えたり、あるいは造り付け家具と揃えたりすることで、窓の存在感はますます高まり、部屋に大きな魅力をもたらしてくれるのです。
コストを抑えつつ造作を設けることは十分可能です
ところで、造り付けの家具を設けるのはコスト的になかなか難しい面もありますが、工夫次第で解決が可能です。
例えば下の書斎コーナーでは縦長の窓と机の高さを揃えて一体感を出しています。窓と机がセットで存在することで「読書の場所だよ」という主張と魅力がしっかり備わっています。
けれども、造作としてしつらえられているのは机の甲板一枚だけ。造り付け家具未満のとてもシンプルなしつらえです。でも魅力は十分発揮されています。この書斎コーナーは、木工事の枠内で十分に作れてしまうのです。

【写真6】伊豆の住宅 設計・織田遼平/織田建築設計室(写真・下里卓也)
このような工夫でできるだけ木工事でしつらえて行く。そうすると人工(にんく)や材料費を節約でき、さらに場所づくりの効果は絶大です。すてきな場所というのは、時として甲板一枚で作れます。そしてそれを強くバックアップする存在がまさに窓なんです!
水回りの窓だってすてきに作れます
水回りは住まいの中でも特に造作や機器類が多く存在する場所です。ここに窓を設けるとしたらどう設けるでしょうか。例を見てみましょう。
洗面室は小さな部屋ですが、そこには洗面器、鏡、洗面用具の棚などたくさんのしつらえが必要です。そんな中で窓をどう設ければ良いか?
下の写真はそんな課題を見事に解決した例です。鏡があるので正面に窓は設けられない。そこで窓をめいっぱい左に寄せて縦長に設けています。そして枠を鏡と揃え、さらには枠と右側の棚をも揃えて、三者の一体感を演出しています。結果、小さな部屋にオブジェのような美しい魅力が生まれてくれました。
ちなみにこのしつらえはすべて木工事です。

【写真7】高基礎の家 設計・青木律典/デザインライフ設計室(写真・長田朋子)
また下の例は玄関土間の手洗いコーナーです。ここでは周囲からのプライバシーを加味して、天井にピタリとついた高窓を用いています。こうしますと天井からの反射光が期待できるんですね。暗くなりがちなコーナーもこんな工夫で明るく照らし出すことができます。
ちなみにこの洗面カウンターもまた木工事で造られています。

【写真8】柿生の家 設計・礒健介/礒建築設計事務所(写真・西川公朗)
今度はキッチンを見てみましょう。キッチンにもまたカウンターや吊り戸棚、換気扇など多くの要素が存在します。一歩間違えると雑然とした並びになってしまいそうです。
けれども下のキッチンでは、カウンターと吊り戸棚の間いっぱいに窓を設けてキッチンを明るく照らし出しています。調理中に外の緑を眺めて楽しむこともできます。
またサッシュは通常より外側に取り付けているので、窓辺に鉢植えや飾りを置くこともできます。忙しいときの多い部屋だけに、こうしたしつらえは住み手のみなさんを喜ばせてくれることでしょう。

【写真9,10】可児の家 設計・本田恭平/mononoma(写真・山内紀人)
窓を隅に寄せて設けるとこんな魅力が
さて窓の配置でもう一つ紹介したい例があります。それは窓を壁や天井の隅に寄せて設ける方法です。
下の写真をご覧ください。

【写真11】大和の家II 設計・礒健介/礒建築設計事務所(写真・礒健介)
このLDKでは窓を壁と天井の隅に設けています。こうすることで、リビングの場所とダイニングの場所とを柔らかく分けています。窓を思い切った位置に設けると、窓をきっかけとした場所がはっきりと生まれ出る、そんな魅力を備えた手法ですよね。
窓を普通に設けると、どうしても上部の垂れ壁や側面の壁部分がなんとなく半端な存在になりがちです。そんなとき、こんな手法が部屋をもっともっとすてきにしてくれることでしょう。
隅の窓は光の美しさも見せてくれます
ところでこのように隅に窓を設けると、もう一つすばらしい魅力を生み出すことができます。それは光の効果です。
下の写真は同じ部屋を別アングルから見たものですが、窓が隅に設けられているため、壁と天井が柔らかく照らされてきれいに光っています。この光は室内に拡散しながら、部屋全体を明るく照らし出してくれてもいます。
このように隅の窓は視覚的な美しさと照明効果の両方を室内にもたらしてくれるのです。同じ窓でも配置次第でうんとすてきな存在になってくれることが、この例からもおわかりになると思います。

【写真12】大和の家II 設計・礒健介/礒建築設計事務所(写真・礒健介)
実は窓と光の関係、とっても深いんです。こればかりはじっくりとお話ししたい。
そこで私、決めました。次回は窓のもたらすすてきな光のドラマを、みなさんにたくさん紹介いたします。
どうぞお楽しみに!
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