前川建築(富山県立山町)は、地元・立山町内にあり、長く手入れがされていなかった「屋敷林」を活用し、豊かな緑(庭・植栽)を抱えた4棟の住宅が立ち並ぶ景観形成型の分譲地「sun-kyo(さんきょ)立山利田」を完成させた。社長の前川守さんは「今回の取り組みを、地域の歴史や文化、景観を受け継ぎながら、新しい時代の価値観や暮らし方を実現する場所として再生し、長期にわたって資産価値を保持できる手法として広げていきたい」と意欲を見せる。 【編集部 関卓実】
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屋敷林は、強風や雪、強い日差しなどから家屋と敷地を守るために周囲に植えられた樹木群を指す。富山県は砺波平野を中心に、広大な田畑の中にこの屋敷林が点在する集落形態「散居村」の景観が今も残るエリアとして全国的にも知られている。ただ最近では、その屋敷林も住まい手を失い、手入れが途絶え、荒れ果ててしまうケースも少なくないという。
同社による開発の舞台となったのも、空き家となっていた築40~50年の家屋を含む、長らく管理されていなかった屋敷林。敷地面積は約1700㎡で、遠くには雄大な立山連峰を望み、近くには一級河川の常願寺川が流れる、自然と眺望に恵まれた場所だ。
プランの策定にあたり、全国各地の工務店とのコラボによるその地域ならではの家づくりの実績が豊富で、戸建ての住宅団地の計画などにも精通する建築家の趙海光さん(ぷらん・にじゅういち)を招き、自社の設計士とともに設計チームを編成。両者の知見を融合させながら設計を進めた。
前川さんは「立山連峰を背景に、水田が広がる土地に散居する屋敷林のある美しい風景を守っていくことをコンセプトに掲げた」と振り返る。そのうえで、維持管理していくことが難しい屋敷林を新しい形で継承していく方法として、「数軒の住宅で屋敷林をシェアし、環境を共有する」という暮らし方を導き出した。
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| 住まい手を失い、空き家となっていた家屋も含めて長い間、手入れがされていなかった「屋敷林」が、4棟の住宅と小屋や庭・植栽がゆるやかにつながる分譲地「sun-kyo」として生まれ変わった。分譲地の周りには田んぼがのびやかに広がる。屋敷林と「散居村」の定義を現代的に再解釈し、ひとつの敷地を田園に見立て、その中に豊かな緑を抱える複数の住宅を散らすことで、全体として美しい家並み景観を創出している | |
「あるものを生かす」 広葉樹を残し“明るい森”に
敷地の造成では、できるだけ先人が残してくれた“財産”を継承しながら、同時に環境負荷を低減するため、「あるものを生かす」というスタンスを徹底。通常であれば、建物・樹木あわせて解体・撤去して更地にし、できるだけ多くの区画を詰め込むところだが・・・
この記事は新建ハウジング10月10日号4・5面(2025年10月10日発行)に掲載しています。
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