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「4号特例縮小でリノベーション市場はどうなるのか」「リノベーション事業は何から始めればよいのか」「買取再販の可能性を探りたい」など、リノベーション事業への関心が高まる中、新建ハウジングの「今さら聞けないリノベの売り方2」で講師を務めました。タイトルに「売り方」とあるのは、建築リテラシーを有していることを前提に、いかに事業化するかにテーマを特化しているから。実績を上げている工務店の事業責任者をゲストに招き、新建新聞社・三浦社長と筆者が参加し、事業化の核心に迫る構成になりました。
第二期の今回は、以下のお三方に登壇していただきました。
第1回:アートテラスホーム(横浜)・伊藤マネージャー
第2回:北王(札幌)・中澤ゼネラルマネージャー
第3回:U建築(飯田)・小沢常務
成功事例だけでなく、一部の“しくじり”経験も共有され、商圏や強みの異なる3社の共通点や相違点を踏まえながら、工務店リノベの「暗黙知」が浮き彫りとなりました。今回は、その講座でのポイントを振り返ります。
〈アートテラスホーム〉行政や地元企業と連携しながら事業拡大
アートテラスホームは、地元・横浜市金沢区の活性化への想いが強い工務店です。行政と連携した見学会や、鉄道会社とのマンションリノベーションプロジェクトなど、官民を問わず連携しながら事業を展開しています。
受注実績も、一昨年は2000万円クラスが4件だったのに対し、直近では3000万円クラスが8件まで増加。単価・棟数ともにアップ。工務店リノベとしての業態が確立しつつあります。
1棟目の戸建てリノベモデルハウスは売却に時間を要しましたが、その経験は再販ノウハウとして蓄積。現在はマンションリノベモデルルームを軸に、販促を継続しています。強化に着手したのはここ数年ですが、その分、これから始める事業者にとって等身大の参考事例といえるでしょう。
〈北王〉モデルハウス・モデルルーム複数展開で年商5億円超
北王は、戸建てリノベモデルハウスとマンションリノベのモデルルームを複数展開し、案件の創出につなげています。物件は相場を見極め、仕入れ・売却価格をシビアに設定。一見すると買取再販型に見えますが、狙いはあくまで新規リノベ案件の創出です。
メーカーとのコラボ、座談会イベントなど企画も多彩。さらに、新築事業部や不動産事業との連携により「新築が入口→リノベーションを受注」や「リノベーションが入口→新築を受注」という相互送客を実現。規模拡大で部門連携が難しくなりがちな中、柔軟に体制を組み替える力が同社の大きな強みです。
〈U建築〉確認申請リノベに真正面から挑み事業化
U建築は、1棟目のリノベモデルハウスでは成果が出ませんでしたが、2棟目から筆者も関わり、集客から営業までの仕組みづくりをサポートしました。建て替えとリノベーションを比較検討する顧客層から3000万~4000万円級の受注を獲得しています。
競合が多い2000万円級ではなく、高単価案件に的を絞る方針を取っています。そのため、確認申請が必要なリノベーションにも積極的に取り組み、業務はあえて内製化。申請フローや関連書類作成のノウハウを社内に定着させています。こうした市場性・希少性・模倣困難性を備えた能力は、持続的競争優位の源泉となります。
<共通項から見える6つのヒント>
この3社の共通項をまとめてみると、以下のようなヒントが見えてきます。
1.市場規模や競合、自社強みから適切な事業領域を設定
2.新築事業で培った強みをリノベーション事業に活用
3.モデルハウスやモデルルームは「案件創出」のための拠点
4.新築とリノベーションの比較検討顧客に柔軟対応
5.事業推進のキーパーソンが存在し、仕組み化意識が高い
6.新築事業に人的リソースが偏らないよう本業発想でリノベーション事業を展開
おわりに
地域性や強みは異なりますが、3社ともマーケティングを起点に全体像を構築し、独自のポジションを築こうとする姿勢は共通しています。きっと、これからリノベーション事業に挑戦する工務店にとって、多くの示唆が得られたはずです。
「良きものを売るは善なり、良き品を広告して多く売ることはさらに善なり」という言葉は、近江商人の「三方良し」に通じます。住宅業界でも、高い施工品質と正しい理念は社会的価値であり、それをわかりやすく広めることはさらなる社会貢献です。
今後も、建築リテラシーとマーケティング力を併せ持つ工務店が、各地で1社でも2社でも増えるよう尽力していきます。

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