国土交通省はこのほど、2024年度の「下請取引実態調査(元下調査)」の結果(PDF)を公表した。これによると、契約締結後に工期・請負代に影響する事象が発生した際に、変更協議の申し出があったかについては、「申し出があった」が39.1%、「申し出はなかった」が10.5%、「そのような事象はなかった」が50.5%となった。申し出への対応では、全体の95.4%が「協議に応じた上で工期・請負代金の変更を認めた」と回答している。
労務費の価格転嫁については、下請との間で定期的に「協議の場を設けている」と答えた元請業者が21.6%、「おおむね設けている」が40.2%となった。下請からの取引価格の引き上げ要請があった際の協議については、「必ず応じている」が39.6%、「おおむね応じている」が50.9%となり、合わせて9割以上が協議に応じている。
一方、下請負人に対して、依頼時に作成された当初見積書と最終見積書に記された請負代金に差があるかを尋ねたところ、「最終見積書の金額の方が高い」は2.4%にとどまった。「金額に差がない」は48.4%、「1割程度低い」は29.6%、「1割~2割程度低い」は14.8%となっている。

当初・最終見積書での請負代金額の差
各規制への対応進む
支払手段に関する調査では、元請の85.7%が「全額現金で支払っている」、7.7%が「少なくとも労務費相当分は現金で支払っている」と回答。「全額手形で支払っている」は4.0%にとどまった。手形による支払いについては、現金化までの期間を60日以内(調査当時は120日以内)にすることが求められているが、「すでに60日以内としている」が29.0%、「今後60日以内にする」が63.7%となり、商慣行の改善が進みつつある。
下請代金の支払時に諸費用を差し引く「赤伝処理」については、あらかじめ下請と行う協議の中で差し引く内容や根拠を示さなければならないが、「書面に明示、協議した上で差し引いた」が20.7%、「協議はしたが書面に明示せずに差し引いた」は16.3%、「協議をせずに差し引いた」は2.0%に抑えられている。

「赤伝処理」の状況
下請負人を対象とした工期の設定状況に関する調査では、「余裕がある工期」(10.0%)または「妥当な工期」(77.0%)が設定されているとの回答が、合計で9割近くを占めた。工期に時間外労働上限規制が考慮されているかについても、「考慮されている」が46.9%、「おおむね考慮されている」が47.2%となっている。本来、両立が難しい工期の適正化と労働時間の短縮に同時に立ち向かう、現場の努力が透けて見える。

時間外労働上限規制の工期への配慮
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