大幸綜合建設は、大阪府東大阪市を拠点に22人で年間約8億円規模の公共・民間建築工事を請け負う地域密着の工務店。同社は、2024年から25年にかけてLIXILメンバーズコンテストのリフォーム部門グランプリ(最優秀賞)など有名な賞を相次いで受賞し、新築・リフォームの両分野で全国的な評価を受けた。
これらの受賞をけん引したのは西田宏則さん(43)。2017年に35歳で同社に入社し、2019年には住宅事業部の設立を提案。立ち上げからわずか3年で今回の成果へとつなげた。その成果に至るまで、どんな道のりがあったのか。西田さんに話を聞いた。【編集部 峰田慎二】
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| 2024年9月、日本エコハウス大賞・新築部門優秀賞を受賞した「庭とつながる縁側のある家」外観(左)と1階リビング(右)。奈良町家の佇まいや空間構成を踏まえつつ、窓配置や中間領域の扱いに設計塾での学びをさりげなく織り込んだ | |
苦難を経て募った「家づくり」への想い

大幸綜合建設 住宅事業部長
西田 宏則さん
西田さんの「家づくり」への原点は、大工だった父親との記憶にある。中学生時代に父親が手がける建築現場でグラスウール断熱材の施工を手伝った思い出や、大学生の時に父の元請会社が倒産したため「父親が25歳のときに建てた」自宅が突如売却され「原風景」を奪われた経験が、「将来は家づくりに携わり、自分で家を建てたい」という西田さんの思いを強くした。
大学は建築学科に進み、新卒で大手ハウスメーカーに就職するも、営業職では「プランニングができない」「工事に関われない」状況に限界を感じ、約2年で退職。その後入社した設計事務所では、希望する設計業務とは程遠く、建売分譲住宅の確認申請の代理業務ばかり。
姉歯事件を機に受注が激減し、24歳で退職を余儀なくされた。その後大阪府北摂地域の工務店2社への転職を経験したが、これも1社目は突然のM&Aで組織の混乱に巻き込まれ、2社目も社長の失踪とその後の赤字経営に苦しむなど、苦難の連続だった。
「超高断熱・高耐震住宅」との出会い
そんな西田さんにとって大きな転機となったのは2社目の工務店で悶々としていた2013年、建材メーカー主催のセミナーで松尾和也さんの講演を聞いたこと。「パッシブハウス級の超高断熱、許容応力度計算による耐震等級3の構造性能を知り、衝撃とともに、目指すべき住宅のイメージが明確に定まった」と西田さんは当時を振り返る。
これをきっかけに高断熱・高気密住宅の技術習得を学ぶ工務店の任意組織、新木造住宅技術研究協議会(新住協)にも入会した。所属する工務店の厳しい経営状況で従来の資材調達ルートも途絶えるなか、ホームセンターで建築資材を調達し、施主の了解を得て自社負担で気密工事を初施工するなど、困難な状況でも果敢に挑戦を続けた。
この時期、2014年、西田さんは妻の実家の建て替えを任され、31歳で初めて設計を担当。新住協の推奨仕様「Q1.0(キューワン)住宅」を採用して、それまでの学びを実践する貴重な機会になった。しかし、その後も勤務先の経営は安定せず、事業は限界を迎えていた。
自社ブランド「DAIKOstyle」始動
2017年、地元東大阪での再出発を決意した西田さんは、新住協の勉強会で顔見知りだった大幸綜合建設に求人があることを知り、社長の表孝典さんに連絡。快諾を得て入社した。入社当初は非住宅の修繕を担当していたが、2018年の大阪北部地震と台風21号による災害を機に、前職の顧客からの修繕の問い合わせが相次いだことで、西田さんは改めて耐震・断熱の高い家づくりへの思いを再燃させた。
西田さんは、高断熱・高耐震住宅の標準化を軸に据えた住宅事業部の立ち上げを会社に提案し、表さんから賛同を得た。2019年には、社長の自邸を兼ねたモデルハウスが竣工。これにあわせて、工務店コンサルタント・南和彦氏(ヒトモノコト)の協力を得て、ブランド構築に着手した。
「DAIKOstyle(ダイコースタイル)」は、充填+付加断熱による二重断熱、許容応力度計算に基づく耐震等級3を標準仕様とし、「日本らしい素材と設えで、長く愛されるデザイン」を追求する、高性能な木の家をコンセプトとして始動。
2020年には・・・
この記事は新建ハウジング7月10日号16面(2025年7月10日発行)に掲載しています。
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