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藤原 徹平 建築家・フジワラテッペイアーキテクツラボ |
1975年神奈川県横浜市生まれ。横浜国立大学で建築学・都市計画・映画批評を学び、大学院修了後、隈研吾建築都市設計事務所にて100以上の国内外プロジェクトに携わり、パートナー・設計室長を歴任。2009年にフジワラテッペイアーキテクツラボを設立し、建築家・教育者・研究者・まちづくり実践者・アートプロジェクトプロデューサーとして、分野を横断した活動を展開。主な建築作品に「稲村の森の家」「クルックフィールズ」「Obama Village」「扇芳閣_本館再生プロジェクト」など |
かつての横浜・本牧地区は豊かな漁村の風景が広がっていた。私の故郷でもあるこの地が埋め立てられ、石油コンビナートに変貌する過程を見て、「これはまずい」と幼少期から違和感を抱いていた。
埋め立てに代表される急速な国土開発は短期的には経済成長に貢献したが、自然環境との不均衡を引き起こす「地球を壊すメカニズム」の一つとなった。いわば国土の「フランケンシュタイン化」で、そのツケが回り、さらに今急激な人口減少と住宅需要の縮小に直面している。これからの時代は、国土・自然環境・人間の生活が調和する社会を描くことが建築の使命となる。
我々の事務所では、建物の設計にとどまらず、「未来の社会をどう描くか」に重点を置く。中でも「未来の村づくり」というアプローチは、地域の未来を構想する手段として重要である。以下に私がそのように確信するに至った2つの事例を紹介したい。これらの経験から私は、地元の工務店こそが地域再生の拠点づくりを主導するプレーヤーになり得ると確信している。
地域循環開発のモデル
千葉県木更津市の「クルックフィールズ」は、私が独立して間もない頃に手がけた、新しい農業と食のあり方を提案する施設である。
音楽プロデューサーの小林武史氏から、農業と食、そして暮らしの新たなビジョンを示す場所をつくりたいと依頼を受けたことがきっかけとなった。
約1年をかけて小林氏とマスタープランを練り、そこにバーマカルチャーデザイナーの四井真治氏が参画。敷地内の水循環と農地計画をランドスケープの基盤とし、木更津市と連携して農地に特別用途地域を定める「地区計画」を策定した。
施設内のホテルでは宿泊者に自ら収穫した野菜を使う「農業体験」を必須とするなど、用途制限を逆手に取ったブランディングに成功。浄化槽の水は直接放流せず「バイオジオフィルター」を通して土地に戻すなど、生態系の循環を促した。地元産の砕石を使い、市民によるセルフビルドで石積み造成を実施。地域住民の参加を促し、地域経済が循環する拠点とすることで・・・
続きは「あたらしい工務店の教科書2025」P.52〜でお読みいただけます。
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