住宅の高性能化が進む中、空調は住まい手任せにせず、設計者がきちんと設計することが重要になっています。本連載では森こうすけさん(ミライの住宅代表理事)が、住宅における空調設計のノウハウを解説。第2回目は「空気線図」のお話です。(毎月30日号掲載)
梅雨は一年のうちで最も空調が難しい時期になります。読者の皆様も、除湿をしようとしてエアコンを運転したら、温度が下がり過ぎてしまって困ったり、相対湿度のパーセンテージが思ったように下がらず顧客からの相談に対処できなかった、というご経験があるのではないでしょうか。
除湿に限らず、どうすれば適切な空調ができるのでしょうか。その最も基礎となるのが、「空気線図」です。空気線図には、①空気の比エンタルピー(空気の持つエネルギー)、②絶対湿度、③乾球温度(空気の温度)、④相対湿度、⑤比容積(空気の比重)、⑥水蒸気分圧、⑦飽和度、⑧湿球温度、⑨熱水分比、⑩顕熱比―といった、多様な目盛りが存在します。大工さんは差し金1本あれば法隆寺でもつくれると言われますが、空調技術者は空気線図があればどんな建物の空調でも設計できます。
それほど空気線図は空調設計に必要な要素を網羅した、便利なものです。空調を修めたいと思うのなら、空気線図は避けて通れないでしょう。
「比エンタルピー」って何?
さまざまな目盛りの中でも、住宅の空調設計でよく使うのは、比エンタルピー、絶対湿度、相対湿度、乾球温度、顕熱比の5つの目盛りです。乾球温度、相対湿度から絶対湿度や露点温度を読み解く演習をやったことのある実務者も多いと思いますが、比エンタルピーという概念は多くの方にとってよくわからないもののようです。今回は比エンタルピーと空調計画の関係性に触れようと思います。
比エンタルピーの単位はkJ/㎏(DA)。「1㎏の重さの乾燥空気が持つエネルギー量」という意味で、温湿度が0℃・0%の空気が持つ比エンタルピーを0kJ/㎏(DA)として、温度や湿度が上がるにつれて比エンタルピーの量も増えることになります。
kJ/㎏(DA)の単位はイメージしづらいと思いますので、より身近なWh/㎥という単位に直して考えると良いでしょう。1㎏の空気は体積に直すと約0.83㎥。1Whは3.6kJなので・・・
この記事は新建ハウジング6月30日号8面(2025年6月30日発行)に掲載しています。
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