大工集団の工務店・OND(オンド)は、共創・共感・共生の経営理念を掲げ、社員大工全員で1人の施主(家族)に向き合いながら、施主も交えて「みんなでつくる」スタイルを実践する。
効率や利益よりも、みんなでつくることを優先する同社の現場には、ワクワク感や楽しさがあふれ、自然に新しい顧客や同社で働きたいという若者を呼び寄せる。
同社代表で10代から大工一筋の田口隼人さんは、高度な技術など大工の伝統を常にリスペクトしながらも、従来の枠組みにとらわれることなく、今の時代の大工のあり方や大工だからこそできること、大工の可能性を模索し続ける。【編集部 関卓実】

ロゴ入りのそろいのスタッフジャンパーをまとったONDのメンバー
ONDでは、物件ごとに田口さんを含む社員大工5人の中から棟梁を決め、その棟梁がヒアリング・打ち合わせから、プラン・設計、現場施工・管理、引き渡しまで、マルチ大工としてワンストップで担う。
メイン担当として棟梁を決めながらも、基本的には5人の社員大工全員が何らかの形で全現場に携わり、それぞれが施主とコミュニケーションしながら、家づくりを進めていく。施主も含めて「みんなでつくる」のがONDのスタイルだ。
同社の家づくりの現場には、施主が週4~5回のペースで来ることも普通だ。施主の家族が壁塗りをしたり、家具を製作したりするなど一部をDIYするパターンも少なくない。
田口さんは「家づくりを家族にとって生涯、記憶に残る素敵な思い出にしたい。住む人が、家をつくる過程に深く関わることで愛着が生まれ、完成したあとも長い期間にわたって家を愛してくれる」と思いを語る。
田口さんは「作業効率や売り上げ、利益よりも経営理念でもある『みんなでつくる』が優先される」と言い切る。プランについても、それぞれが施主家族をイメージしながら、ミーティング形式で意見を出し合ってまとめていく。
「みんなで1つになってつくるからこそ、施主だけでなく、つくり手である自分たちもワクワクし、やりがいや大工としての誇りもリアルに感じられる。その結果として、より良い住まいが完成する」(田口さん)。
市産材をふんだんに使用
家守りを担う“町医者”に
同社の家づくりは、構造材や羽柄材に可能な限り地元の岡崎市産の無垢材を採用し、木材以外の部分についても自然素材をふんだんに用いるのが1つの特徴だ。田口さんは・・・
この記事は新建ハウジング3月10日号4面(2025年3月10日発行)に掲載しています。
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