内閣府はこのほど「地域課題分析レポート(2024年秋号)」(PDF)を公表。ポストコロナ禍における若者の地域選択と人口移動の状況についてまとめたほか、地方に若者を呼び込むために行うべき取り組みについて考察している。
同レポートによると、コロナ禍で減速していた東京圏(東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県)への人口流入が2023年に再び拡大し、12万人を超える水準となっている。特に東北・東海・近畿・九州からの流入が多い傾向にあるという。
20~29歳の地域移動のタイミング(全国・過去5年間)を見てみると、「職業上の理由」を挙げた割合が最も多く、30.3%を占めている。次いで「住宅を主とする理由」(22.1%)、「結婚・離婚」(12.5%)の順となった。このうち非大都市圏から三大都市圏に引っ越した人では、「職業上の理由」が62.5%、「入学・進学」が20.6%を占めている。

現住地への移動理由(資料より引用)
若者が“地元以外”を選ぶ理由については、進学では「希望の進学先が都市部にある」「学びたい内容を学べる大学が地元にない」「親元を離れたかった」が上位に。地元で就職をしない理由(大卒・院卒)では、「志望する企業がないから」「都会の方が生活の上で便利だから」「都会の方が遊びや趣味活動の上で便利だから」「実家に住みたくない(離れたい)」から―などが上位となった。
若者を呼び込む高賃金とテレワーク
また、若年者の希望する雇用がどこにあるかを調べたところ、相対賃金の高い地域ほど転入超過比率が高い傾向にあることが判明。若者層が好むテレワークや在宅勤務を導入する企業は、南関東や近畿に多いことが分かった。

賃金と人口移動の相関(資料より引用)
一方で、2025年卒見込みの大学生のUターン希望の割合は、コロナ禍前の2020年卒と比べて増加傾向に。特に東海、九州・沖縄、東北、北陸では約半数がUターンを希望している。他に、民間調査(中国電力「中国地域白書」)によれば、調査対象者の約3分の2が「希望する仕事、やりがいのある仕事があれば地元に残りたかった」と答えている。
魅力ある大学カリキュラムの提供を
そこで地方が若者に選ばれるための取り組みとして、地方大学が“学生の取り込み”を行うことを提案。大学卒業後の地元定着率を高めるため、①地元企業と連携した魅力あるカリキュラムの提供、②地域への本社機能の移転・拡充、③大学発スタートアップ創出の推進する、④大学・大学院卒の高度人材の雇用、④テレワークの推進―などに取り組むべきだとした。
さらに、女性が地元に戻りやすい環境をつくるため、男女間賃金格差の是正、女性の管理職登用など雇用慣行の改善、非正規雇用の正規化などを推進し、構造的な賃上げを実現することが重要だとまとめている。
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