住宅業界で多発「転職社員による営業秘密の漏洩」

弁護士・秋野卓生さんが、工務店が知っておくべき法律知識を毎月20日号で解説する本連載。今号は、9月末に大手飲食チェーンの経営者が逮捕された事件から、転職による企業の情報漏洩リスクを考えます。

① カッパ・クリエイト社の社長逮捕

回転ずし大手「かっぱ寿司」を運営するカッパ・クリエイトへ転職する前に競合他社「はま寿司」の内部データを不正に持ち出したとして、警視庁は9月30日、カッパ・クリエイト社の社長を不正競争防止法違反容疑で逮捕しました。

住宅業界においても「エディオン対上新電機事件」という有名な不正競争防止法違反事件があります。エディオンの元従業員が2013年12月末に退職した後、翌2014年1月に上新電機に入社しましたが、その後、元従業員によりエディオンのリフォーム事業に属する機密情報が上新電機に流出した懸念が生じ、調査を行った結果、元従業員による数万件におよぶ営業秘密が不正に取得され、また、それらが上新電機で利用されたことが確認されました。

この事件で、まずエディオンは、刑事告訴の手続きを取りました。2014年8月に元従業員を刑事告訴・・・

この記事は新建ハウジング10月20日号 9面（2022年10月20日発行）に掲載しています。