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若手設計者のみなさんこんにちは。
今回は趣向を変えて、住まいづくりの最前線で活躍する人にじっくりお話を伺ってみました。以前からぜひやってみたかった企画です。
ご紹介するのは古谷野工務店社長の古谷野裕一さんです。この連載でも何度か紹介した方です。迫真のインタビューを前後編に分けて紹介いたします!
はじめに簡単なご紹介を。
ご実家は東京・板橋区の古谷野工務店。創業明治10年という老舗です。古谷野さんは六代目の社長です。
主に住宅の設計施工を手掛ける、社員数10名の工務店さんです。設計は古谷野さんと女性スタッフIさんの2名、現場監督さん3名の体制です。
古谷野さんご自身は意外にも設計畑で修業をした人です。著名な建築家の設計事務所で設計実務に励みました。
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古谷野 裕一 さん | 1984年東京都生まれ。小川広次建築設計事務所を経て、現在、株式会社古谷野工務店代表取締役 |
徹底した設計主導の古谷野流現場
設計と施工両方を請け負う工務店の経営者で、かつ根っからの設計者でもある古谷野さん。まず尋ねたのは設計サイドと現場サイドのバランス。これをどのようにとっているのでしょうか。
まず古谷野さんには、お仕事を貫くはっきりとした姿勢があります。それは、設計が現場や材料を主導することです。古谷野さんは言います。
私はクライアントの要望に最大限マッチできるように、細部の寸法や現場での作業まですべて設計でコントロールしています。
そして化粧合板を例に話してくれました。
たとえば化粧合板は普通、三六判など決まったサイズで突板が貼られています。つまり材料の寸法が設計や現場を主導している。けれどもこのままでは設計や現場が三六判のサイズで規定されてしまいます。
なるほど、既製品の建材サイズが住み手の生活までも直接規定することになってしまうわけですね。そこで古谷野さんは、
化粧合板を仕上げ材として用いるなら、化粧合板に加工される前の段階で突板工場に行き、在庫の中から適切な素材を選ぶ。そして寸法や貼り方はすべてこちらで決める。こうすることで、住まいのニーズにもっとも合った寸法を作っていくことができます。
なんだかすごいお話ですよね。究極のプロ意識です。けれども、なんだか時間がえらくかかりそうですね。
合理性には反していますが、設計施工での請負でないとこんなことはまずできないし、うちならこれができるんだ、という強みにもできます。
ここで私も気がつきました。設計と施工の仲立ちをして・・・という次元はすでに超越して、むしろ古谷野工務店でなければできない設計施工について語ってくれているのです!お話が俄然面白くなってきました。
ちなみに下の写真は「木場の家」の工事現場です。壁面をマンゴーの化粧合板で仕上げています。これだけ強い表情の壁であれば、寸法や木目などすべてコントロールしたくなりますよね。

【写真1】木場の家の内壁 設計・古谷野裕一 施工・古谷野工務店
図面は現場の組み立てと段取りの説明図
さてそうなると気になるのは図面です。図面は設計と施工の最大のコミュニケーションツール。古谷野さんはどんなふうに描いているのでしょうね。
私の描く図面は、設計事務所で描く実施設計図面よりは施工図に近いものです。現場サイドが見やすいように、余分な情報を省いて必要な事柄だけ描く。
また作り方だけでなく、常に現場での段取りまで細かくイメージしながら図面を描きます。
例えば、一つの作業で極力複数の業者さんが重複しないように設計します。ここを注意して設計するだけで、コスト面でもメリットが生まれます。
なるほど、設計主導というのは、現場での作業手順まですべて見越したことだったのですね。
だとすると、古谷野さんご自身かなり現場に行かれるのでは?
現場にはとても頻繁に行きます。朝行って気になると夜にまた行ったりします。
具体的に図面はどんなふうに描くのでしょう?
階段の納まりのような複雑な部分も、図面どおりの手順で進めれば確実に作れるように描いています。
例えば「下田町の家」の階段。ちょっと変わった形なだけに、作る手順を非常に重視して図面を描きました。
現場加工を減らして手間を合理化することも大切。施工精度も高められますし。

【写真2】下田町の家の階段 設計・古谷野裕一 施工・古谷野工務店(写真・西川公朗)
でも、そこまで深く考えると設計のハードルがえらく上がってしまいそうですね。
これらを考えなければ設計の自由度はもっと増すかもしれません。しかし自由になったから良い設計ができるというわけではない。
むしろ多くの条件の中で知恵の輪を解くように深く考えて取り組むからこそ、最適解が生まれると信じています。
果たして現場の反応はいかに?
さてそうなると、現場で作る大工さんら職人さんたちの反応はとても興味があります。
みなさん私の進め方に慣れてくれています。大工さんなどは「緊張するけど、単純に作っているより楽しい」なんて言ってくれます。
手間はたしかにかかりますが、良い仕事のためなら時間はかかっていいのです。手間が余計かかったらその分はみなさんにしっかりお支払いしています。
大工さんは古くから古谷野工務店とお付き合いのある職人気質の人。
頑固な大工さんで、はじめはなかなか話を聞いてくれなかった。でも一軒竣工したらわかってくれて「良い家じゃないか」なんて言ってくれました。
大工さん、今では古谷野さんの図面を「すべてが納まるようにしっかり描いてある。どの部分にも意味があって、それを解いていくのが楽しい」と言ってくれています。新しい仕事が始まると、家に帰ったあとまで図面を見てくれているのだそうです。
いかがでしたか?
後編では住まいづくりをめぐる古谷野哲学、そしてスタッフ育成論へとお話が進んでまいります。
どうぞお楽しみに!
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