総合マーケティングビジネスを展開する富士経済(東京都中央区)は、太陽電池関連市場の調査結果を「2025年版 太陽電池関連技術・市場の現状と将来展望」として発表した。調査によると、国内市場では再生可能エネルギー政策の推進や電気料金の高騰を背景に、「住宅向け初期費用ゼロモデル」が2040年度に2024年度比で4.0倍の1278億円に達する見通し。これに加え、関連する各分野で大幅な成長が期待されている。
「初期費用ゼロモデル」とは、発電事業者が設備を所有し、利用者が初期投資なしで電力を利用できる「第三者所有モデル(TPO)」を指す。具体的には、PPA(電力購入契約)、リース、割賦といった契約形態が含まれる。PPAは、発電事業者が設置した太陽光発電設備から電力を購入する仕組みで、利用者にとっては初期費用が不要な点がメリットだ。
市場拡大の背景には、地方自治体による設置義務化や補助制度の強化がある。特に、2025年4月から東京都で大手住宅メーカーなどを対象に新築住宅への太陽光発電設備の設置が義務化された点に言及。今後もこうした制度的支援が導入を後押しすることで、新築戸建住宅への普及が進むとした。
住宅分野以外では、法人向けPPAモデルの2040年度市場規模が2024年度比で7.4倍の3162億円に達する見通しだ。建材一体型太陽電池(BIPV)は同93.7%増の1958億円を見込み、ペロブスカイト太陽電池の採用先としても注目されている。太陽電池の世界市場は、2040年に金額ベースで27兆658億円、出力ベースで1405GWに達するとした。現状では供給過剰による価格下落が続いているが、中長期的には生産調整によって価格が上昇し、成長が持続すると予測している。
種類別では結晶シリコン系が金額ベースで90%を占め、将来的にも同水準を維持すると見込む。また、結晶シリコン系の中では近年変換効率の高いN型が急速に普及し、2023年にP型を逆転して太陽電池モジュールの主流となったことを指摘。P型は今後、N型やPSCタンデム型、薄膜系へ移行していくとみられるとした。ペロブスカイト太陽電池などの薄膜系も2040年に向けて大きく拡大する見通しだ。
太陽光電池市場は国内市場全体で、FITの導入により売電を目的として2015年度までに急拡大した。だが、現在は導入が一巡し、縮小傾向が続いている。こうした中、2025年度も市場縮小が続くと予測。ただし、再生可能エネルギーの主力電源化や脱炭素政策の支援を受け、2030年代後半には既存設備の更新や交換・改修といったリパワリングによって再び活性化する可能性があるとした。
住宅用市場では設置義務化が進むとする。ただ、将来的には人口減少に伴う新築住宅着工件数の減少により市場は縮小していくとした。
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