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前 真之 東京大学大学院 准教授 |
東京大学大学院工学系研究科建築学専攻科准教授。博士(工学)。住宅のエネルギー全般を研究テーマとし、健康・快適で電気代の心配がない生活を太陽エネルギーで実現するエコハウスの実現と普及のための要素技術と設計手法の開発に取り組む。2024年、賃貸住宅の高性能化のために、研究者や企業が連携して研究を進める「高性能賃貸研究会」を発足 |
住宅や土地の価格が高騰し、特にマンション価格はこの10年で約2倍に上昇した。戸建価格も2020年以降、急激に上昇。住宅着工戸数は減少し、特に注文住宅の落ち込みは顕著となっている。
賃貸住宅は比較的底堅い状況が続いているが、その性能には大きな問題がある。多くの賃貸住宅は冬寒く、夏暑く、光熱費も高い。快適な暮らしを実現するには程遠い状況だ。
2020年に省エネ基準の適合義務化を見送ったことは致命的だった。資材が本格的に高騰する前で原価が比較的低かった時期に対策を講じていれば、現状とは大きく異なる結果になっていたはず。政策対応の遅れが日本の住宅性能の低迷を招いていることは紛れもない事実だ。
賃貸住宅の構造的問題
賃貸住宅における最大の問題は、借り手とオーナー(貸し手)の利害が相反している点にある。
借り手はできるだけ安価で快適かつ省エネな住環境を求めるが、オーナーはキャッシュフロー・利回り、キャピタルゲイン(売却益)を重視する。そのため断熱や高効率設備への投資がなかなか進まない。
結果として、現在の賃貸住宅は「低性能が当たり前」となっており、日本全国の賃貸住宅の多くが、基本的な住宅性能を満たしていない。良質な住宅が供給されにくい状況がいまだ続いている。
「家を買わなければ、まともな性能の住宅に住めない」というこの状況が続けば、特に若年層や低所得層が快適な暮らしを享受できなくなる。これは深刻な社会的問題で、これを変えるには・・・
続きは「あたらしい工務店の教科書2025」P.36〜でお読みいただけます。
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