国土交通省はこのほど開いた中央建設業審議会のWGの中で、労務費の基準の方向性について示した。
これによると、労務費の基準の実行性を確保するためには、契約段階(入口)と労務費・賃金の支払い段階(出口)の両面での対策が不可欠であり、これまでの「もらったら支払う」方式から、「適正水準を積み上げる」方式に変える必要がある。また、公共工事・民間工事・戸建住宅工事では、それぞれ受発注の規模や注文者、工事に携わる技能者の特性が異なるため、その特性に応じた方策を講じる必要があるとしている。

労務費の実効性確保のイメージ図
戸建住宅工事向けの対策も
共通の方向性として、入口段階の対策では、まず受注者が労務費の基準をもとに自社の歩掛に応じた労務費を算出し、見積りを作成する。注文者はその見積りを尊重した内容で契約を締結する。ダンピングの防止に向けては、建設業者から提出された見積りの内容を建設Gメンが調査。これにより発注者から下請までの各契約段階で適正水準の労務費を確保する。
一方、出口段階の対策では、注文者が受注者に対して労務費の基準を踏まえた労務の支払いを実施。CCUSの活用などにより技能者の知識・技能・その他の能力を公正に評価し、適正な賃金を支払う。
戸建住宅の工事では、発注者が個人であるケースが多いほか、短工期である、小規模事業者や一人親方が書面による契約を交わさない、といった特性もある。そこで個人の注文者や一人親方などに向けたガイドラインを作成して基準の反映に努め、適正な見積りを商慣習化する。
「処遇優良事業者証」を交付
適切な支払いを行わない悪質事業者への対策では、技能者からの相談や情報提供を受ける制度を構築する。希望する技能者が給与明細や労働日数・時間、勤務経験(CCUSレベルなど)を入力するシステムを想定している。違反が疑われる事業者については、国土交通省のネガティブ情報サイトで社名などを公開する。同システムの構築は2026年度中を予定している。
一方、適正賃金を支払い、技能者の処遇改善に努める事業者に対しては「処遇優良事業者証」を交付。優良な事業者ほど受注しやすくなる環境を整備する。優良事業者の評価については、支払った技能者への賃金の総額や総労働時間、根拠となる賃金台帳・作業日報を、希望する建設業者が「賃金確認システム」(仮称)に入力。これらを国・都道府県と連携した第三者機関が評価する仕組みとする。
中央建設業審議会では、今後も引き続き労務費の基準に関するWGを開催し、11月頃に基準の勧告を行う予定だ。
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