石川県は4月24日に開いた会見で、能登半島地震の被災家屋の修繕・利活用に向けた取組について報告。当初公費解体を希望していた家屋についても解体を留保することで、修繕による居住や他者による利活用など柔軟な選択が可能となることを改めて示した。県では公費解体完了目標を今年10月末としていたが、解体留保を希望する物件については、この目標の枠外で管理する方針だ。
馳知事は「公費解体申請済であっても留保を申し出れば、修繕・利活用の検討をしていただける。最終的にやはり解体したいとの判断に至ったとしても、問題なく公費解体ができるので安心してほしい」と述べた。
相談392件中、187件が修繕可能
県は被災家屋の修繕・利活用を促進するため、昨年12月に無料の相談窓口を設置し、関係団体による「被災家屋活用推進タスクフォース」の会合を定期的に開催。所有者の意向に応じて、①現地での修繕可能性調査および修繕方法の提示、②見積りが可能な修繕事業者の紹介、③民泊施設や賃貸住宅といった活用方法や活用事業者の紹介―などを行っている。
相談窓口に4月18日までに寄せられた相談件数は392件で、203件が「修繕して自ら住みたい」、127件が「他者に修繕して活用してほしい」との意向を示している。このうち現地調査を行った190件については、3物件を除いてほぼ全件が修繕可能な物件であることが判明。他者による活用を希望する約50物件が住まい教育推進協会、全国古民家再生協会が運営する「古民家住まいる」に掲載された。

相談窓口への相談件数と内容
全国古民家再生協会では他に、休眠預金による支援制度を活用して、集落単位で修繕・利活用が可能な物件群を洗い出す調査を実施。集落単位の分散型ホテルなどとしての投資可能性について調査している。
「焦らず納得のいく検討を」
被災家屋の保存・活用に向けては、まず個別相談を受け付ける。続いて現地調査を行い、修繕して活用可能かどうかを判断する。一度解体を決めたものの再度利活用を検討したい場合は、この間に市町に対して公費解体の留保を申し立てることができる。
検討の結果、自ら修繕して住むことを希望する場合は、耐震診断や設計などを経て修繕を行う。他者による活用を希望する場合は「古民家住まいる」などに掲載し、希望者と売却などの交渉を行う。居住を断念する場合や活用・売約先が見つからなかった場合は、再び公費解体の手続きを進める。
個別相談の受付から修繕、活用・売却などの契約までの期間は半年から1年程度掛かるため、県はすでに解体申請を済ませた所有者にも、焦ることなく時間をかけて納得のいく検討をしてほしいと呼び掛けている。

被災家屋保存・活用ワークフロー
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