国土交通省は4月22日、土砂災害防止対策の取組強化に向けた提言(PDF)を公表した。「土砂災害防止対策推進検討会」による提案をとりまとめたもので、「土砂災害警戒区域」「土砂災害警戒情報」「警戒避難体制」の3つの観点から現状の課題を分析し、今後の対策について提案している。
このうち住宅の立地にも関わる土砂災害警戒区域の指定については、高精度な地形情報を活用した基礎調査を継続して実施すること、必要に応じて区域指定基準の追加変更を行うこと、被災リスクのある警戒区域外の潜在的危険箇所について地形情報を提供することなどを今後の方針として示した。
警戒区域の精度に課題
検討会の報告によると、2023年に全国で把握された土砂災害は1471件で、このうち人命または身体に危険を及ぼす土砂災害が1351件発生した。その約8割は土砂災害警戒区域内で発生したが、調査中など指定前の区域で160件(11.9%)、警戒区域外の区域でも48件(3.6%)確認されている。

土砂災害発生状況(左)と警戒区域外で起きた人的被害(検討会資料より)
土砂災害警戒区域の指定状況については、2020年以降2度にわたって全国で基礎調査が実施され、2024年度末までに69万3675箇所が土砂災害警戒区域に指定された。一方、住民などの理解が得られないなどの理由で156箇所が未指定のままとなっているが、避難情報発令の対象に含めるなどの対策がとられている。
高精度調査でカバー率向上
土砂災害警戒区域の指定基準については、従来の基準に該当しない箇所でも人的被害が発生している現状を踏まえ、高精度な地形情報を活用した基礎調査を実施することで区域指定の確実性(確度)を高める。これにより23年時点で約85%だったカバー率が約96%にまで向上する見込み。
その一方で、警戒区域数を無数に増やした場合に危険な区域を指定する意義が薄れ、かえって避難行動に悪影響を及ぼす懸念があることから、カバー率をどこまで引き上げるかの見極めが重要となっている。また、警戒区域の指定基準未満の地形で発生する土砂災害については、発生頻度が低く被害も比較的小さいため、直ちに基準の見直しを検討する状況にはないと分析している。
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