土砂災害防止対策の課題について話し合う「第3回土砂災害防止対策推進検討会」が1月20日に開かれ、対策強化に向けた提言案がまとめられた。最終確認を行った後、3月中に公表する予定だ。
提言では、近年警戒区域外で発生した土砂災害で人的被害が生じている状況を踏まえ、高精度な地形情報を活用した調査により土砂災害警戒区域のカバー率向上を図る考え。基礎調査結果の公表までに時間を要する場合には、調査の実施を事前に公表することも想定している。
土砂災害警戒区域指定については、警戒区域外で起きた土砂災害の地形要件や被害状況を分析し、警戒区域指定基準を追加する方向で検討。土砂災害リスクの注意喚起を図るため、渓流や30度以上の急傾斜地などの地形情報を参考情報として提供する。人家が近隣にないために土砂災害警戒区域から除外されている箇所についても、可能な限り注意すべき箇所として記載する。2020年3月に策定された「土砂災害に関する地区防災計画作成のための技術支援ガイドライン」(PDF)の内容についても見直しを行う。

今後の方針の一例(検討会資料より抜粋)
土砂災害警戒情報については、発表基準(CL)の更新を実施。警報の空振りや見逃しの発生頻度を減らすため、気象庁などによる最新の降雨予測技術を活用した、新たな土砂災害警戒情報の発表方法について検討する。

防災気象情報の改善案(検討会資料より抜粋)
RC造での被災・流出事例なし
今回の検討会では追加報告として、参加委員から建物の構造別の土石流被災事例について説明があった。
国土技術政策総合研究所(国総研)の調査によると、2019年~23年に発生した土砂災害により生じた人的被害(死者あり)は31箇所で、このうち25箇所は土砂災害警戒区域に指定されていた。家屋の被災戸数29戸で、すべてが非RC造だった。一方、RC造建物については躯体が被災または流出した事例はこれまでになかったが、建物の窓や扉、シャッターなどから土石流が流入し、屋内が被災した事例はあったという。

2019年~23年における土砂災害の被害状況(検討会資料より抜粋)
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