モデルハウスなどを持たない小規模な工務店にとって、見学会は受注活動上重要な意味を持つが、棟数が少ないと機会が限られる。豊泉工務店は、年3棟前後の新築で可能な限り見学会を行い、見込み客を囲い込む手段にしている。特に構造見学会では多くの資料を展示し、エアコンも特別に設置。来場者に断熱と気密の重要性を説き、その効果を伝えている。【編集長 荒井隆大】
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構造見学会の様子。写真、チラシや本、パネル、建材のモデルなど多数の資料が展示されている |
豊泉工務店(東京都武蔵村山市)の創業は1911(明治44)年。創業者は現社長・富山圭子さんの曽祖父に当たる。時代が下って2017年からは、結局見送られた“2020年の省エネ基準適合義務化”を見据えて高性能住宅への取り組みをスタートした。現在は断熱等級6が標準で、太陽光発電や蓄電池の搭載率も約3分の2と高い。
見学会自体は以前から行っていたが、富山さんによるとコロナ前の集客は「飛び込みのお客様と、口頭でオーナーさんに(紹介などを)お声がけする程度」。それでも、顧客の家族などで“〇年後に建てたい”など、潜在的な需要をキャッチできてはいたという。
手間でも資料はたくさん展示
エアコンは必ず2.2kW
見学会は原則として、同じ住宅で構造と完成、どちらも実施する。富山さんは、構造見学会を「構造や断熱、換気システムなど、完成したら見えなくなるが最も重要な部分を説明する」機会、完成見学会は「実際の空間の大きさや使い勝手を体感する」場と位置付けている。
構造見学会は、性能に関わる要素を伝える場でもあるだけに力を入れる。会場には断熱材やサッシのカットモデル、結露やヒートショックなど断熱性が暮らしに及ぼす影響の説明パネル、BELS評価書のサンプル、過去の施工事例(写真)―さまざまな資料が所狭しと並ぶ。来場者が富山さんとゆっくり話をしたりアンケートを記入してもらうために、アウトドア用のいすとテーブルを持ち込み、パソコンをつなげるようモニターも必ず設置している。
また「見学会のためにわざわざ」エアコンを設置するという。 “見学会用”は2.2kW (6~8畳用)で、実際に設置する機種とは異なる。リアルな温度にならなくとも、小さなエアコン1台で十分という事実を伝えて「高断熱なのに暑い・寒いというネガティブイメージを抱かせない」ことが重要だ。
ただし・・・
この記事は新建ハウジング5月30日号4面(2025年5月30日発行)に掲載しています。
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