中小企業庁は4月25日、2025年版の「中小企業白書」および「小規模企業白書」を公表した。中小企業の動向を明らかにするとともに、成功事例や現状の打開策、支援策などについて示している。
人手不足が及ぼす閉塞感
中小企業・小規模事業者の動向のうち、景況感を示す業況判断DIについては、コロナ禍の2020年からは持ち直しているものの、24年以降は全体的に足踏み状態となっている。中でも建設業や製造業では、コロナ前の水準を下回る傾向が見られる。

中小企業の業況判断DIの推移
中小企業の人手不足感は依然として深刻で、特に建設作業者、販売従業者、サービス職業従業者など「現業職」での不足が顕著となっている。人材確保のために求められる賃上げでは、春季労使交渉で約30年ぶりの賃上げ率を達成。中小企業単独でもプラス4.5%に迫る高水準となった。
その一方で、中小企業・小規模事業者の賃上げ余力は大企業と比較して厳しい状況で、業績の改善が見られない状況下で賃上げを実施している企業が約4割に上っている。賃上げ余力を高めるために必要な労働生産性(一人当たり付加価値額)についても中小企業は伸び悩んでいる。

春季労使交渉による賃上げ率の推移
労働生産性の向上の切り札となる業務のデジタル化については、多くの中小企業・小規模事業者で進展。紙や口頭による業務が中心でデジタル化が遅れていた企業の割合が大きく減少する一方で、デジタル化による業務効率化やデータ分析に取り組む企業、アナログな業務環境からデジタルツールを活用した環境に移行する企業が、この1年で増加した。

デジタル化の取組段階
経営者の経営力向上がカギに
白書ではさらに、中小企業・小規模事業者が成長・発展を遂げるために重要な「経営力」について分析。経営計画策定と実行、適切な価格設定を行う戦略的経営が、業績向上の促進につながることを明らかにした。
また、経営理念や業績・経営情報の共有を重視するオープンな経営が業績向上に寄与。賃上げ、社内コミュニケーションの円滑化、働き方・職場環境改善など、従業員を大切にする人材経営が従業員の確保・維持に貢献するとしている。
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