政府は5月27日、2025年版「土地白書」(PDF)を閣議決定した。土地に関する動向や2024・25年度の基本的施策についてまとめている。25年度の住宅施策では、空き家などへの対策、老朽化マンションへの対応、優良田園住宅の建設促進などを主な施策として挙げた。
24年度の土地に関する動向では、全国平均・住宅地・商業地のいずれも地価が4年連続で上昇。特に三大都市圏で上昇率が拡大している。住宅地の地価は、低金利環境の継続により住宅需要が堅調に推移し、これにより地価が上昇した。中でも東京圏や大阪圏、転入者が多い地域などで上昇率が高くなっている。他に、リゾート地・観光地、大手半導体メーカーの工場が進出している地域などでも住宅需要が高まっている。一方で、2024年の新設住宅着工戸数は約79.2万戸となり、前年比で3.4%減少した。

地価変動率の推移
空き家・空き地の活用推進
24年度は基本的施策として、▽低未利用土地の利用▽適正な土地の管理の確保▽住宅対策▽所有者不明土地問題への対応―などを推進。土地の取引に関する施策では、不動産取引市場の整備を行い、「全国版空き家・空き地バンク」の活用を進めた。
同年に実施した空き地・空き家に関する意識調査結果によると、日常的に利用されていない空き地・空き家の管理状況について、41.5%が「管理が行き届いている」、41.8%が「管理が行き届いていない」と回答。特に車・電車などで1時間超かかる土地で管理が不十分なケースが多く見られた。
土地を利用していない理由については、「特に活用を考えていない」(30.3%)が最多となり、次いで、「何に活用してよいかわからない」(19.1%)、「土地活用やマイホーム建設等の資金が確保できていない」(11.5%)が上位となった。土地活用に必要な措置については、情報提供や紹介、アドバイスを求める意見が約4割を占めている。

土地の利活用に当たって必要な措置
ニュータウンの再生を支援
25年度の基本的施策では、24年度に続いて災害に強いまちづくりや、低未利用土地の利用などを推進。住宅対策についても前年度と同様に、①道路・公園・下水道・河川などの関連公共施設の整備、②空家等対策計画に基づく空き家の除却・活用などの空き家対策、③区分所有法制の見直しなど老朽化マンションへの対応、④農山村地域、都市の近郊における優良田園住宅の建設促進、⑤地域公共交通の利便性向上を通じた住宅団地の再生―などに努める。
このうち優良田園住宅の建設促進では、高度成長期に計画的に開発された大規模な住宅市街地(ニュータウン)の再生に関する取組を支援。官民連携による居住環境の整備や優良な住宅の建設により、誰もが暮らしやすい街づくりを行う。
地域の土地利用事例も紹介
同白書では他に、地域活性化のための土地利用例を紹介。大和ハウス工業による生物多様性確保に配慮した森林住宅地「ロイヤルシティ阿蘇一の宮リゾート「ASONOHARA(アソノハラ)」 、千葉県柏市の「新柏クリニック」による森林浴のできるメディカルケアタウンづくり、木造密集市街地からの延焼火災を防ぐことを目的に整備した東京都豊島区の「IKE・SUNPARK(イケ・サンパーク)」などについて解説している。

ロイヤルシティ阿蘇一の宮リゾート「ASONOHARA」
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