硬質ウレタンフォームを使用した高性能断熱パネル「FPウレタン断熱パネル」が、1985年の販売開始から40周年を迎える。4月から住宅も省エネ基準適合義務の対象になった今年、「FPの家」もリブランディングを図り、新たな一歩を踏み出す。4月16日に開催された「FPの家」関東合同総会で発表された内容をお伝えしよう。

FPコーポレーション執行役員の治部泰久さん
「省エネ基準の適合義務化は、『FPの家』グループが40年間取り組んできたことが当たり前になったということ」。FPコーポレーション執行役員の治部泰久さんはそう話す。一方で、義務化によって一定の断熱は当たり前になり、近い将来、基準自体の引き上げも予定されている
「40年間、高断熱住宅をけん引してきたからこそ生み出せる、新しい価値を創造したい」という思いで、リブランディングに踏み切ったという。
「FPの家」のブランドを再構築するにあたり、重視したのが「環境」と「健康」だ。前者は、地球温暖化・気候変動問題による熱帯化(多湿化、線状降水帯の多発など)という課題が、我々の前に立ちはだかっている。また、日本では地震災害のリスクも考えなくてはならない。後者は、ヒートショックや室内熱中症、最近ではモーニングサージ(朝、急激に血圧が上昇する現象)など、断熱性の低さに起因する問題が、近年とみにクローズアップされている。
この2つを「『FPの家』で解決する」課題だと位置付けたうえで、さらにこの2つの課題を「いつもの安心」(日常)と「もしもの安全」(災害時など)に分類。高断熱・高気密がもたらす、健やかな日々の暮らしという従来からの価値に加え、多発する大災害から人命や生活を、「FPの家」で守ることを目指した。
佐藤実さんも認める耐震性への寄与度
新たな「FPの家」のロジックを構築するにあたり、佐藤実さん(M’s構造設計社長、「構造塾」主宰)の協力を得た。佐藤さんは、FPウレタン断熱パネルの“耐震性能向上効果”を高く評価しており、「FPの家」が耐震性にも優れることを、改めて訴求していく。
今年4月の建築基準法改正で、袖壁や下がり壁などの準耐力壁を、存在壁量に算入できるようになった。同じ耐震等級3でも、改正までは準耐力壁を除いて壁量計算を行っていたのが、4月以降は準耐力壁を壁量に含めて計算できる。つまり、同じ耐震等級3でも、実質的には壁量が減少し「余力」がなくなっている。
しかし、耐力壁としての大臣認定(壁倍率2.1倍)を取得した実績もあるFPウレタン断熱パネルの利用を前提にすれば、例え準耐力壁を壁量に算入したとしても、パネルが余力として機能する。佐藤さんが検討したデータ取得時の実験では、筋かいたすき掛けで壁倍率5.84倍という結果に。ウレタンにも破断はなかった。
オーバースペックではない価値のあるものを提供
治部さんは、佐藤さんの「命を守ることにオーバースペックという言葉はない」という発言を引きつつ、これまでの経験とリブランディングを通じて「命を守るためのものはオーバースペックと言われない」ことに気づき、それが新しい価値になると考えた。
地震災害の際、家が倒壊しなければ命を守ることにつながり、大きなダメージがなければ避難所に足を運ばずとも住み続けることができる
また過去には、床上浸水の被害を受けたがFPパネルには全く影響がなく、数週間で原状回復し、日常に戻れた住まいもある。これらが災害発生後の暮らしを守る要素となり、FPパネルがオーバースペックではなく命と生活を守る役割を担うとした。
こうした新しい価値を表す、新たなメインコピーとして“くらしといのちを守るため。”を設定。さらに「FP」にもFelicity(至福・豊かさ)
Protect life(いのちを守る)の略語、という新しい意味を付与した。「くらしと命を守れるのは、『FPの家』だからこそできること」という思いを大事にして、「FPの家」は新たなフェーズに突入していく。
佐藤実さんに聞くFPパネルの実力
構造の専門家として、今回のリブランディングを監修した佐藤実さんに、FPウレタン断熱パネルを、構造・耐震という視点から語ってもらった。佐藤さんが考えるFPウレタン断熱パネルの実力とは?(聞き手:治部泰久さん)
― 住宅の構造・耐震性で最も気をつけるべきことは何でしょうか?
地震は数年に一度しか起きない―これでも世界的には多い方ですが―ので、地震が起きたときは耐震への興味・関心が高まりますが、人はすぐにそれを忘れてしまう。さらに、どうしても人には正常性バイアスが働くので、大地震が起こるとはわかっていても、自分が住む地域では起きないと考えてしまいます。
こうした心理状態が家づくりにも反映されてしまうため、地震に強い家も増えてはいますが、そうではない家も建ち続けています。これが続くうちは、地震による住宅の被害は減りません。地震は天災ですから止めることはできませんが、地震で人が命を落とす原因はほとんどが建物の倒壊で、これは人災ですから防げるはずなんです。
地震による建物の被害は、過去のものにしなくてはいけません。「何十年も昔は、地震で家が倒れて人が亡くなっていたが、今はもうそんなことは起きない」という世界が実現してほしいですね。
―佐藤さんにとって、FPウレタン断熱パネル(以下「FPパネル」)の魅力はどこにあるでしょうか?
断熱も耐震、どちらも大切ですが全く別物だと考えられる中で、FPパネルが断熱性と耐震性を両立することは大変魅力的だと考えています。工場も見学しましたが、工場生産による品質の高さに加え、耐震性にも優れていることを実感しました。
壁用パネルの実験結果も拝見しましたが、現行製品のままでも十分な耐震性能がありますね。すでに高い完成度を誇るその内容を、新たなロジックとして展開していく。今までの価値に加えた内容を「FPの家」会員工務店が家づくりへと活用し日本全国に広めていただきたいと考えます。
―今回、佐藤さんからは「余力」を大切にしようとアドバイスをいただきましたが、なぜ余力が大切なのですか?
余力は“(構造)設計上考慮しているわけではないが、実際には耐力に寄与する力”です。建築基準法の耐震基準は震度5強の地震で損傷せず、震度6強~7の地震でも倒壊せず命を守ることができるレベル、だとされています。巨大な地震で住むのが不可能なぐらいに変形しても、最後の粘りで倒壊しない―そこに余力の効果があります。震度6強、7クラスの地震が多発する中、設計時により多くの余力を確保できれば、地震で倒壊しないだけではなく住み続けるための性能も保つことができます。
だから、FPパネルの検証でも“設計に盛り込まない余力”を重視しましたし、予想以上の余力を持っているなと実感もしました。ただ、余力がある分壁量を減らしたくなったりすると思いますが、それは避けていただきたい。FPパネルは耐震性の余力をつくるものではないはずです。
パネルの余力を含めて耐震等級3にするのではなく、あくまで許容応力度計算による耐震等級3が絶対のスタートライン、と考えてほしいですね。 FPパネルの余力を見込まずに耐震等級3を実現すれば、既にパネルが持っている余力がプラスアルファとして加わります。そこから、さらに制振装置を加えてより上の性能を目指すこともできるでしょう。
―5年後、10年後の日本の住宅はどうなってほしいですか?
「構造塾」として、許容応力度計算による耐震等級3の普及を図ってきました。生活者にもずいぶん浸透してきましたが、次のステップとして、構造の安定と経済設計を両立する構造計画ルールを広めていきたいと考えています。
許容応力度計算による耐震等級3+構造計画ルールが定着した先、10年後か20年後かはわかりませんが、私が「構造塾」をやる必要や、耐震等級3の重要性を説く必要性がなくなるのが理想です。こうなったら地震の被害もなくなるでしょう。
FPパネルも耐震性向上につながるものですから、地震被害の軽減にも寄与するはずですし、耐震と同様に重要な断熱性も高まります。FPパネルを使うことは、耐震と断熱を兼ね揃えたいい家をつくるための、極めて重要なファクターです。
株式会社FPコーポレーション | ![]() |
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