【HISHIDAメソッド】大工・工務店の現在地と未来の可能性

新築住宅市場が縮小するなかでも、地域工務店や大工はまだまだ進化していけるポテンシャルを秘めている。

この連載では、圧倒的な世界観の住宅・建築によってInstagramのフォロワー26万人を誇り、“進化系工務店”の1タイプとして、業界内外から熱い視線を集める菱田工務店（長野県坂城町）にフォーカス。

同社代表で、大工アーティストとして国内外で活動し、「Forbes JAPAN カルチャープレナー30 2024」にも選出された菱田昌平氏が、地域工務店が手しごとをベースに進化を実現する方法論として「HISHIDAメソッド」（思想と経営手法）を解説する。

菱田昌平 ひしだ・しょうへい 菱田工務店 大工アーティスト Shohei Hishida

1979年生まれ、長野県坂城町出身。小学校卒業後、中学に3カ月通い、不登校に。リンゴ農家、サッシ業者などを経て大工修行へ。26歳で独立し、2012年に菱田工務店を設立。会社経営のかたわら、大工アーティスト・Shohei Hishidaとして活動。会社とは別のShohei Hishida個人のInstagramも海外の人を含めてフォロワー24万人を誇る。菱田工務店は、新築受注年間約30棟で、社員約50人。15人の社員大工を擁するものづくり集団で、墨付け・手刻みといった技術も織り交ぜた家づくりを展開。海外も含めて全国から、設計志望の若者が同社で働きたいと門を叩く。

episode 4
大工・工務店の現在地と未来の可能性

連載最終回の今回は、大工・工務店が秘めているポテンシャルとして、当社が現在、取り組んでいるプロジェクトや チャレンジしていることの一端を紹介する。大工や工務店は、クラフトマンシップに立ち返ることで、まだまだ価値を高めていけるし、新しい形へと進化していくこともできるはずだ。全国の意欲ある工務店の皆さんとともに、そのポテンシャルを開花させていきたい。

国際リゾート地・軽井沢に 区分所有型の別荘を新築

近く軽井沢町に、区分所有型の販売形式による別荘が完成する［7月のツアーにて現地視察予定］。「Shohei Hishida」ブランドによるティンバーフレームのベルギー民家スタイルで、木造2階建ての延べ床面積85坪。首都圏や海外の人も対象に販売（24口/販売総額6億円）した結果、現時点でほぼ完売となっており、隣接地で2棟目の建築に着工した。年内の完成を予定している。

軽井沢の区分所有型別荘

このプロジェクトは、個人的には、売上や不動産開発事業などにはあまり興味がなく、大工や工務店としての自分たちの可能性を確かめたくて、どうしてもチャレンジしたかったものだ。

国際的なリゾート地でもある軽井沢で、富裕層をターゲットとするホテルや別荘などの施設は、これまで大手ハウスメーカーやデベロッパーの独壇場で、設計についても著名な建築家が手がけるケースが大半で、地元工務店が構想から設計・施工まで含めて全て行うという例は聞いたことがなかった。

しかし、以前から「絶対に自分たちの建築の価値や世界観は十分に通用する。評価されるはずだ」という確信があった。

そのため我々以上に菱田工務店とその建築を客観的に評価してくれる、不動産開発のノウハウと全国的な販路を持つパートナー企業と資本提携することで、プロジェクトを具現化することができた。

確信を実証すると同時に、大工の手しごとや工務店によるものづくりは、ここまでやれるポテンシャルを秘めていることを示せたのではないかと考えている。

Shohei Hishidaブランドは、ベルギーの古民家をモチーフに自分がリデザインして、つくり方から構築したため、日本はもちろんベルギーにもない唯一無二のものだ。だからこそ圧倒的な価値がついたと思っている。Instagramのフォロワーでもある海外の購入者のひとりも購入理由として「菱田の建築が好きだし、他にはどこにもないんだよね」と言ってくれた。

国が2030年までにインバウンドを倍増させる方針を示しているなかで、各地の宿泊施設が全く足りない状況を見ると・・・

この記事は新建ハウジング5月20日号11面（2025年5月20日発行）に掲載しています。

※この記事は会員限定記事です。ログイン後、続きが読めます。