2021年5月30日号から約3年半続いた本連載も今回で最終回。最終回は「揺りかごから墓場まで」という言葉から始めたい。建物の「生涯CO2」を算出、開示することが、欧州でも日本でも、近い将来に義務化される。建築資材の調達・製造から始まり、建設を経て居住、修理・改修、そして解体、廃棄・リサイクルまでの建築の全プロセスでのCO2排出が対象となる。
EUの欧州委員会は2024年4月、2028年から延べ床面積1000㎡以上の新築の建物に、生涯CO2の算出と開示を義務付けると決定した。2030年からは、全ての建築物にその対象が広げられる。日本でも、政府が2024年11月から類似の制度の検討を開始。26年に通常国会への関連法案提出が目指されている。
生涯CO2の算出には、ライフサイクルアセスメント(LCA)という、ISO国際規格(14040と14044)に基づいた手法が使用される。建物だけでなく、市場に出されるあらゆる製品やサービスを対象としている。CSR(企業の社会的責任)の活動や報告において、このLCAがよく使用されている。
国際エネルギー機関(IEA)の報告では、建築物関連が世界のCO2排出量(2022年)の37%を占めている。気候・環境保護のために、建物の建主や建築事業者も、建築物の最初から最後まで、しっかり責任をもつべきだ、という現代社会の要請が背景にある。
欧州でも日本でも、過去数十年の間、省エネ建築の性能表示制度や技術革新によって、建物の断熱(+蓄熱)性能は高まり、冷暖房等のエネルギー使用量を抑える取り組みは進んだ。しかしそれは・・・
この記事は新建ハウジング1月30日号10面(2025年1月30日発行)に掲載しています。
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