日本の戸建て住宅市場は、大手によるマス広告やモデルハウス戦略が主流となり、中立的な比較情報が整わないまま推移してきた。その結果、大手は顧客接点で優位に立ち、市場を支配してきた。こうした状況を打開しようと、兵庫県三田市のベンチャー企業・スパークは2024年1月に「住宅展示場ネット」を立ち上げた。価格と仕様を明示した住宅CGを無償公開するプラットフォームで、開始から1年半で260社・180件が集まり、急速に広がっている。
※記事内の画像は「住宅展示場ネット」ページを編集部で再構成したものです

全国の工務店を地図上で検索。住宅展示場ネットには全国の260社が登録。所在地から検索でき、地域に対応可能な工務店を直感的に確認できる
従来の総合住宅展示場や住宅ポータルは、出展料や紹介手数料が工務店の大きな負担だった。これに対し「住宅展示場ネット」は、新築年間200棟以下の工務店を対象に、入会金・月会費・掲載料・紹介手数料をすべてゼロに設定。最大6棟までのモデルと会社ページを無料公開できる。無償化の代わりに同社は、CG制作やルームツアー動画、SEO対策やアクセス分析などの有料サービスで収益を確保し、広告依存に代わる「フラットな市場」の実現を目指す。
掲載情報は「事例ページ」と「会社紹介ページ」で構成。事例ページでは価格や延べ床面積、断熱・構造仕様などを共通フォーマットで開示し、CADデータを高精細CG化した1〜3分のルームツアー動画を公開する。会社ページでは施工エリアや理念のほか、性能を数値化して可視化。利用者は複数社を横断的に比較でき、工務店は主観的説明に頼らず仕様と性能で評価される。
代表の中村和生さんは、プレカット会社で工務店支援に携わり、団体の事務局長も務めた経験を持つ。地域工務店が情報発信や集客で大手に押される現実を目の当たりにし、業界に根強い「情報の非対称性」が大手優位を生む温床であると認識。これを打開しようと「バーチャル展示場」の構想を温め、2019年に独立した。コロナ禍を経て23年に事業再構築補助金を得てひな形版を完成。24年1月から本格運用に踏み切った。

住宅展示場ネットを立ち上げたスパーク代表・中村和生さん
中村さんが一貫してこだわったのは「価格と仕様の公開」。ただしこの方針に対しては懸念も根強い。「工務店同士の価格競争を過度にあおるのではないか」「大手のスケールメリットに吸収されるのではないか」「価格だけが前面に出て設計力や地域性といった本来の強みが見えにくくなるのではないか」といった懸念の声も少なくない。
それでも中村さんが公開を必須とした背景には・・・
この記事は新建ハウジング9月10日号12面(2025年9月10日発行)に掲載しています。
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