建設産業専門団体連合会(建専連)はこのほど公表した2024年度の「働き方改革における週休二日制、専門工事業の適正な評価に関する調査結果報告書」(PDF)の中で、技能労働者の労働時間や残業時間について報告した。24年4月から適用された時間外労働の上限規制への対応に苦悩する企業の様子がうかがえる結果となっている。
上限規制の認知度については、「内容まで知っている」が78.2%となり、前年度から4ポイント上昇。上限規制の遵守状況については、「かなり努力して遵守できている」が46.6%で最多に。「遵守するのは困難だと思う」の4.3%と合わせて約5割を超えた。
実際の平均年間残業時間(正社員)は、「120時間未満」が技能労働者で63.0%、技術者で 57.9%となり、多くの企業が前年より残業時間を削減しているという結果に。ただし、300人以上の規模の企業については、技術者の残業時間が「240時間以上360時間未満」となる企業が4社(40%)となるなど、規制があっても人材不足により残業を減らせない現状が垣間見れた。

技能者・技術者の残業時間の推移
移動時間も悩みの種
労働時間とみなされることの多い、集合時間から現場までの平均移動時間については、「30分以上1時間未満」(65.8%)が最多となり、次いで「1時間以上2時間未満」(22.7%)が多かった。
時間外労働の上限規制が業務に与えた影響について、個別意見では「ゼネコン職員のみ休みが取れるだけ。施工側は責任者が休むことにより工程の遅れ、工事金額の圧迫につながっている」(塗装)、「会社から現場への通勤時間も時間外労働になるため営業範囲が限られる」(圧入)などの声があった。
従業員への影響では、「もう少しで終わる仕事を翌日に残してしまうため段取りがしにくい」(型枠大工)、「労働意欲が高い社員の働く場がなくなった」(鉄筋)、「元請が残業抑制を図りたいがために、重大事項の決定を金曜日の午後に連絡してくるケースが増えた」(型枠大工)などの問題が生じている。
「労働時間の管理は紙で」は6割
時間外労働の削減に向けて実施している取組では、「業務の内容・分担・工程の見直し」(43.3%)、「経営トップ等による定時退社等の呼びかけ」(37.3%)、「職員の意識改革」(36.8%)などが上位となった。
労働時間の確認・管理方法については、「紙の出勤簿、タイムカードなどで管理している」(61.6%)が最多で、前年度からは2.4ポイント減ったものの、依然として大半を占めている。このうち「100~299人」では48.3%、「300人以上」では83.3%が「ICカードや勤怠管理ソフトで管理している」と回答しており、規模の大きい企業ほどDX化が進んでいる傾向も明らかとなった。

労働時間の確認・管理方法
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