凰建設は3月1日、本社の隣接地に、断熱等級7、耐震等級3相当(上部構造評点1.5)の性能を備える常設のリノベーションモデルハウスをオープンした。既存の躯体を生かした「カバー工法」を採用し、建築確認が不要な範囲で性能向上リノベーションを行った。
社長の森亨介さんは「リノベの本質的な価値は、まだまだ生活者に伝わっていない。リノベにより、これだけ快適で安心・安全な住まいを手に入れられることを、コストも含めて示しながら、新築が“格上”でリノベは新築には及ばない“格下”というイメージを払拭(ふっしょく)する拠点にしたい」と意欲を見せる。【編集部 関卓実】

常設リノベーションモデルのLDK。広いリビングで楽しく遊ぶ孫たちの様子をキッチン・ダイニングから見守る
グランドオープンとして2日間にわたって完成見学会を開いた同モデルは、築30年の店舗(喫茶店)併用住宅の住居部分のみ(木造平屋建て・延べ床面積25.75坪)をリノベーションしたものだ。
森さんの両親(同社・森幹治会長夫妻)が「終の棲家」として暮らす予定だが、今後1~2年間は、性能向上リノベ事業の拡充を図る自社の常設モデルとして運用する。
既存建物の調査の結果、躯体の傷みが少なく、比較的、健全な状態だったことから、できるだけコストを抑えながら性能向上を図るカバー工法を選択。和瓦が載った屋根や漆喰塗りの外壁といった既存の躯体を残したままリノベを進めた。
4月の建築基準法改正以降の市場も見据えながら、地元の行政(岐阜市建築指導課)と事前協議を重ね、工事は建築確認申請が不要な範囲で行った。
漆喰壁や瓦屋根はそのまま既存の断熱材もリユース
外皮性能はUA値0.24W/㎡Kで、断熱等級7(6地域)。漆喰塗りの外壁に対して直接、下地材を組み、ネオマフォーム90㎜厚を外張りした。柱間に充填されていたグラスウール60~70㎜厚は外皮計算には含まれないが、そのまま残した。
屋根は、既存の垂木の下に水平構面となる構造用合板を打ち付け、その下にネオマフォーム200㎜厚を施工。基礎の断熱は立ち上がりを、外側のスタイロフォームAT100㎜厚、内側のカネライトフォーム50㎜厚で挟み、折り返し1m幅に同50㎜厚を付設した。
これも外皮計算には含まれないが、既存の根太間に充填されていた15㎜厚の発泡スチロール断熱材を土間に敷き並べて再利用。既存の天井裏に付設されていたグラスウール(120㎜厚)も、リノベ後は平天井のある居室の天井裏などに再利用した。断熱や吸音などでプラスアルファの効果を得られるほか、産廃の処分費用を抑えることもできる」と説明する。
森さんは「性能部材である断熱材は、基本的にはそのまま残し、撤去する場合でもリユースを考える。計算に入らなくても、断熱や吸音などでプラスアルファの効果を得られるほか、産廃の処分費用を抑えることもできる」と説明する。
開口部は、窓に「佐藤の窓」(スマートウィン)やAPW430(YKKAP)、EW(LIXIL)、玄関ドアにユダ木工の木製高断熱ドアを採用した。
耐震補強については、アカマツの太い梁やヒノキの柱による頑強な木組み(構造)を生かしつつ、金物で必要な補強を行いながら、水平構面(屋根・床)による剛性を確保し、必要箇所に耐力壁(構造用合板)を設けて耐震性を向上。上部構造評点をリノベ前の0.74から耐震等級3相当の1.5まで引き上げた。
エアコン1台で全館空調 玄関・水まわりをより暖かく
換気は第三種換気とパッシブ換気を併用。換気と組み合わせて、暖房用の床下エアコン(2.2kW)、冷房用としてロフトに設置したエアコン(同)のそれぞれ1台で全館空調する。一般社団法人・ミライの住宅の代表として、全国の工務店・設計事務所の設計者に全館空調の計画・設計手法を指南する森さんが設計した全館空調による室内環境(温湿度)も、このリノベモデルのポイントだ。
森さんは、総体的に断熱・気密性能が上がっているなか、・・・・
この記事は新建ハウジング3月10日号16面(2025年3月10日発行)に掲載しています。
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