20年にわたる地域工務店経営者としての経験を生かして、工務店に特化した“伴走型”の経営コンサルタントとして全国の工務店を支援するソルト代表の青木隆行さんは、「不確実な時代だからこそ、工務店にも経営を俯瞰して捉えられる“ゼネラリスト”が求められる」と指摘。同社では全国の工務店の経営者・幹部を対象に、ゼネラリストとしての感覚・思考法を養う『ビジョナリー工務店勉強会』を展開する。「目まぐるしく変化する今の市場をサバイブし、互いに助け合いながら未来への扉を開く仲間を増やしていきたい」と思いを語る青木さんに活動方針などについて聞いた。
「経営は総合格闘技」
ゼネラリストが生き残りに不可欠
住宅・工務店業界の2025年ショックと言われる改正建築基準法の施行や原材料費・建築価格の高騰、コロナ禍を経て高度化・多様化する住まいニーズへの対応、新築戸建て住宅市場の縮小など、先が見通せない激変する環境における工務店経営を考えたとき、経営を俯瞰してとらえることができる“ゼネラリスト”が圧倒的に不足しています。その要因として、工務店の経営者・幹部が、大工や現場管理、設計など専門分野の出身、いわゆる“スペシャリスト”から転じた(もしくは専門実務と経営を兼務する)人が非常に多いことが挙げられます。そのため、設計や施工(現場管理)、ブランディング・マーケティング、財務、組織体制、人材採用・育成など経営に欠かせないファクターの相関関係をきちんと把握したうえで、総合的な視点での経営を意識している人が少ないように感じます。
たとえば自社がつくる住宅の性能(耐震・断熱)やデザイン性のブラッシュアップ(仕様変更)ひとつとっても、それはコスト(財務)や組織、採用、ブランディングなど全ての業務と相関関係があり、影響を及ぼすため、あらかじめそうした影響を織り込んで考えていく必要があります。あくまで傾向のひとつとしてですが、スペシャリスト型の経営者・幹部は、家づくりにおける自社の強みをとがらせていくことは得意ですが、同時に俯瞰的に経営全体を考えていくことには課題もあると感じます。
工務店が、先の見通せない今をサバイブしていくためには、ゼネラリストとしての感覚と思考法を経営者自身が実装する、もしくはゼネラリストとしてのナンバー2(経営幹部)を養成していくことが避けられないテーマとなります。部分的な課題を対症療法的につぶしていく経営手法では、変化の波の大きさとスピードについていけません。「経営は総合格闘技」という意識で、各業務の相関関係をきちんと把握したうえで、変化に適応できる経営体質を強化していくことが求められます。
メンバー工務店同士の対話と関係構築を促進
工務店経営を俯瞰しながらベクトルや戦略を判断できるゼネラリストとしての感覚・思考法を磨く、ゼネラリストそのものを養成・輩出するための業界の新しいプラットフォームが「ビジョナリー工務店勉強会」です。すでに20~40代の若手を中心とする経営者・幹部に加え各部門のスタッフが所属し、月に1回のペースでリアルもしくはオンラインで集まり、毎月異なるテーマを設定して学びを深め、経営改革や業績向上に関する情報交換や知識の共有を行っています。また、定期的(年2回)にメンバー工務店の現地視察ツアーなども実施しています。
互いにアイデアを出し合い、改革や成長を助け合う組織を目指して工務店同士の直接的な対話と関係構築を促し、協力体制も育んでいます。もはや工務店経営の“鉄板”や“王道”がないなか、「この考え方、このやり方であっているのか?」という思いを多くの経営者・幹部が抱いています。目の前の不安を払拭し、未来へのモチベーションを高めていくことも、このビジョナリー工務店勉強会の大切な役割です。今後は、「ゼネラリスト養成講座(経営幹部研修)」や「新人研修」なども展開していく予定です。
2025年は収益構造改善のターニングポイントに
ビジョナリー工務店勉強会では、トータルバランスの良い経営基盤を構築するための“一丁目一番地”として収益構造の改善、確立に取り組みます。分かりやすい指標として、「直工原価での粗利30%以上/1人当たりの売上5000万円以上」を掲げており、それを実現するための具体的なノウハウを提供します。ちなみにリフォーム・リノベーションでは粗利35%以上が目安となります。
先行き不透明な市場とはいえ、2025年は収益構造を改善するターニングポイントとなる可能性もあります。物価上昇に賃金アップが追いつかずに実質所得が減り続けていた状況が反転し、賃金の上昇率が物価上昇率を上回るとの見方が一部にあります。「とにかくコストダウンして良いものをより安く」を盲目的に是としてきたデフレマインドから脱却し、品質やサービスに見合った適正価格によって利益をしっかり確保していくインフレ局面も念頭に置く必要があります。また、50年住宅ローンや残価設定型ローンといった金融商品も住宅購入に対する消費者マインドを刺激する追い風になります。
いずれにしてもビジョナリー工務店勉強会では、市場や経営環境の変化をいち早くキャッチアップし、みんなで“最善手”を考えていきます。具体的な策としては、コンセプトハウス(コンセプトを明確にした企画住宅)を主力事業としつつ、注文住宅は年間数棟のフラッグシップ的なもの(富裕層向け)に位置づけながら、あわせて不動産・分譲事業を行う「ハイブリッド型」への業態転換などを提唱しています。
![]() 株式会社ソルト (山口県防府市) 代表取締役 青木 隆行 |
1972年山口県生まれ。大学卒業後、さくら銀行(現三井住友銀行)入行、融資・外回り担当者として5年間でおよそ300社の企業を担当し、財務の基本を学ぶ。その後、地元山口県にUターンして2000年から地域工務店の経営に携わり、2002年に代表取締役就任、2019年までの間に事業規模2.7億円から20億円超に拡大。財務改善から理念構築、新卒採用、移動式展示場展開、ブランディング・マーケティング・営業力強化、設計コンセプトの明確化、企画住宅の開発・不動産事業展開、事業多角化など工務店経営の入り口から出口までの全てを手がける。2019年にM&Aにより工務店を譲渡。工務店特化型経営コンサルタントとして事業スタート。『社長の左腕・伴走型コンサルタント』として北海道から鹿児島まで全国 20 社のクライアントを支援(2024年 2 月現在)。2024年、工務店特化型COO代行としての事業スタート。 |
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