アヴァンティホームズ(岐阜県岐阜市)は、ニーズの多様化や集客・営業手法の変化、性能のコモディティ化など、コロナ禍以降の急変する環境に適応しきれず、受注が激減。経営危機に直面する中、社長の広田勲樹さんがたどり着いのは「苦手なことをやめ、自分が本当にやりたいことに振り切る」ことだった。新ブランド「十二(とに)の家」の立ち上げを軸に、価値観共感型の家づくりへと舵を切った取り組みが、小規模工務店の生存戦略として効果を現し始めている。【編集部 関卓実】
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| 「十二の家」ブランドの住宅事例。広田さんの暮らしの価値観に共感する人たちが自然に集まるため、結果的に「広い敷地にコンパクトな平屋」というプランニングのメソッドが具現化される | |
同社は「建築家とつくる家」を掲げ、ハイデザイン・高性能を前面に打ち出した商品訴求とリアル会場での家づくり相談会を軸とした集客、マンパワーによる営業を展開していたが、人が会えない・集まれない環境下で一斉に機能不全に陥った。2019年までは年間10棟超の新築受注をコンスタントに維持していたが、コロナ禍を境に急減。23~24年には受注が2~3棟まで一気に落ち込み、経営は危機的な水準に達した。広田さんは「競合の増加により、高断熱高気密といった性能面の優位性も差別化要因として弱まっていた」と振り返る。
経営危機という局面で広田さんは、経営と家づくりを根本から改革することを決断。その際、「何を強化するか」ではなく、「何をやめるか」という判断を重視した。営業を担っていた広田さん自身が営業活動に強い苦手意識を抱えており、効率や数を追う従来型のやり方に限界を感じていたことも大きい。外部顧問として関わっていた射場由次さんのアドバイスもあり、「苦手なことを無理に続けるのではなく、やりたいことを明確にしよう」という方向性が固まっていった。
「営業マンがいない工務店」前面に
その結論が、既存の「建築家とつくる家」をベースとするアヴァンティホームズとは別の、新たな住宅ブランド「十二(とに)の家」を立ち上げることだった。ハイデザインで高性能な住宅を提供する本体ブランドと切り分けることで、十二の家では「自分たちが理想とする暮らし」を制約なく表現できる環境を整えた。ブランド名には、「1年12カ月、それぞれの月に宿る風情や季節の移ろいを感じられる暮らしを実現する家づくりを」との思いが込められている。
本体とは別の専用のウェブサイトを新設することで、「営業マンがいない工務店」としての存在も色濃く打ち出した。それまでの家づくりで磨き上げてきた断熱等級6超、耐震等級3、第一種熱交換換気の組み合わせによる床下エアコン1台による全館空調(暖冷房)といった高い基本性能は前提条件(標準仕様)とし、そのほか施工時の外部検査や60年長期保証なども標準化しているが、性能による訴求はほとんどせずに、暮らし方の価値観への“共感”を軸に据える。
射場さんはこの戦略を・・・
この記事は新建ハウジング1月30日号2・3面(2026年1月30日発行)に掲載しています。
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