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人口減少と新築需要の頭打ちが進む地方で、工務店の構造転換が問われている。兵庫県豊岡市の里やま工房では、実父から事業を引き継いだ2代目の池口純さんが、2017年に100%子会社として別法人「エス・ビレッジ」を設立。既存の戸建て住宅事業を「安定軸」、古民家再生や非住宅分野を「挑戦軸」と位置づけ、二つの法人が補完し合う“両利き経営”によって、地方工務店の持続可能な形を模索している。【編集部 峰田慎二】
古民家再生の挑戦
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| エス・ビレッジの古民家買取再販第1弾(豊岡市出石町、2023年10月竣工)。既存母屋の骨格を残し、木製サッシと漆喰で断熱・意匠を一新。旧中庭をデッキに、蔵は多目的空間へ再生 | |
兵庫県豊岡市出石町。出石そばや芝居小屋で知られるこの町は、白壁の街並みが今も残り、伝統的建造物群保存地区にも指定されている。その一角に立つのが、里やま工房代表・池口純さんの自邸であり、社長就任後に自ら立ち上げた新法人エス・ビレッジの拠点でもある建物だ。
池口さんは「もともとは誰も寄り付かない廃屋でした」と振り返る。築70年を超える古民家を自ら買い取り、構造を生かしながら再生した。屋根や壁を補修し、小屋裏にサーモウール断熱材を充填。開口部は自社標準の木製サッシへ入れ替え、内部は造作家具や欧州ホテル仕様の水まわりで統一した。外構は天然石と雑木で町並みに溶け込む。2020年5月に竣工したこの住まいは、伝統とモダンの調和を体現し、エス・ビレッジの古民家再生における設計思想をかたちにした最初の事例となった。
この経験を踏まえ、池口さんは新法人エス・ビレッジで古民家の買取再販事業を始めた。20年8月、同じ出石町内の空き家を購入し、第1弾案件に着手する。自邸と同じように細部までこだわりながらも、新築ローンが組めるよう販売価格を4200万円に抑えた。
しかし販売はかなり苦戦した。3年間、買い手が見つからなかった。池口さんはその要因をこう分析する。ひとつは・・・
この記事は新建ハウジング10月30日号4〜5面(2025年10月30日発行)に掲載しています。
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