高知県の工務店・西陽建設で3代目社長として奮闘する西森光亮さんは、父の病気によって、大学卒業を前にして事業を継承することになった。社長になったものの悩みを打ち明けられず孤独感にさいなまれる日々の中、ふと参加した経営者コミュニティ「どうだい?」が契機に。先輩経営者と交流したおかげで、自社のあり方や将来へのビジョンを描くことができるようになった。
中小企業の後継者問題は深刻化している。後継者不足は中小企業の廃業の大きな要因であり、事業承継ができなければ日本経済・社会を支える貴重な雇用や技術が喪失する事態にもつながる。中小企業庁が日本政策金融公庫総合研究所の「中小企業の事業承継に関するインターネット調査(2023年調査)」を基に作成した資料によると、廃業理由の約3割が後継者難で、親族に後継者がいないことや継ぐ意思がないことを理由として挙げている。
西森さんが大学生のころ、2代目社長だった父親の容体が悪化し、突如会社を継ぐかどうかの判断を迫られた。「会社経営と言われても、何もかも不安だった」西森さんだが「私が継がなければ社員も困るし、お客様も困ってしまう」と考えた。急な知らせではあったものの、「父親の『お世話になった職人や仲間たちを頼ればできる。少しずつ覚えていけばいい』という言葉が後押しになった」西森さんは病院に通いながら意思を固め、会社を継ぐことを決めた。
急展開の事業承継
正解がわからない日々
経営者として会社をけん引する立場になった西森さんだが、当時は大学を卒業して間もない時期。立場は社会人1年目であり経営者1年目だった。ビジネスマナーや営業、現場管理などを、歳が離れた社員から教わる一方で、経営者としての自立も求められていた。西森さんは「同世代の仲間は一般企業に就職して、歳の近い先輩と仲良く仕事している一方で、私は同じ境遇の仲間が周囲にいなくて孤独を感じていた。経営者として何が正しい振る舞いなのかもわからない。しかし、顧客からは経営者として見られることにプレッシャーを感じていた」という。
職人とのコミュニケーションも課題だった。西森さんは受注を獲得するために営業に奔走したが・・・
この記事は新建ハウジング1月30日号16面(2025年1月30日発行)に掲載しています。
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