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戦略や方向性を考える上で大切なのは、自社や事業を取り巻くマクロ環境を把握すること。
政治(Politics)、経済(Economy)、社会(Society)、技術(Technology)の頭文字を取った「PEST分析」というフレームワークがあります。今回は、この4つの側面から市場を再定義してみましょう。
PEST分析における「政治」とは、政府の方針や4号特例縮小のようなインパクトが大きい法改正、規制緩和などを指します。「経済」は、景気の動向や経済に関する成長率などさまざまな指数が手がかりとなります。「社会」には人口ボリュームや暮らしなど、幅広い要素が入ります。さらに、AIに代表される新技術の開発を中心に見るのが「技術」になります。
特に住宅業界は政策、制度の影響を受けやすいうえ、家計、金融環境に関わる経済も市場を大きく左右します。また、この分析は現在の状況だけでなく、今後の変化、見通しを合わせた視点が大切だと言われています。
住宅およびリノベーション業界を念頭に置いて、政治・経済・社会・技術の4つの要素を整理してみたのが、以下の表です。
新築価格高騰で高まる「代替リノベーション」という位置づけ
着眼点はさまざまですが、まずは新築の価格高騰を取り上げ、本連載の主テーマである「工務店リノベ」の施策につなげるヒントを考えたいと思います。
「新築は予算オーバー」「新築は贅沢品になった」など、コスト面でのシビアさが取り沙汰されています。このような状況の中、性能向上技術の浸透や省エネ改修関連の補助金もあり、「建て替えなくてもここまでできる」という、新築代替としてのリノベーション「代替リノベーション」という存在意義が増していくと言えます。
もちろんリノベーションも資材高騰や法対応コストなど影響を受けますが、工事範囲を調整できるという利点は大きいです。このテーマにおいては、建て替えと比較しながら客観的にリノベーションを同時に提案できる工務店が有利です。
中古購入層も視野に入れた断熱プラン
性能向上に関しては、予算に応じて断熱プランのバリエーションを増やす動きが加速しそうです。特にコストにシビアになりがちな中古購入リノベも見据えた取り組みであり、確認申請不要なリフォーム・リノベーションを想定した関連商品を品揃えするメーカーの働きかけも後押しします。
断熱に関しては、大手が室温やサーモ比較(シミュレーション例)を中心としている中、工事範囲にもよりますが、工務店こそ実物件の性能数値を提示したいところです。
さらに地域の気候や湿度、結露対策といった自社ならではのこだわり、快適さ、心地よさといった体感についても顧客起点で押さえられると理想的です。部分断熱でも身体の芯から温まるかどうか、という視点で提案する例もあります。
ただし、断熱意識は地域差が大きく、温暖なイメージがあるエリアでの訴求は難しいとも実感しています。地域に合わせて、夏バージョン、冬バージョンの比重や見せ方のアレンジ、エリアによっては耐震を入口にして展開することも選択肢の一つです。
また、空き家活用政策や実家問題から、空き家、もしくは空き家予備軍である実家をリノベーションして受け継ぐことが、単に改修工事ということだけでなく、社会課題の解決策でもある点を、改めて認識すべきだと考えています。
相続起点が注目される実家リノベーションにおいては、思い出という情緒的価値を訴求するマーケティングに、引き続きポテンシャルがあると実感しています。Uターンも含めて実家に思い入れを持つ層にいかにアプローチするか、寄り添いをベースにした信頼関係をいかに築けるかがカギとなります。
「最適化リノベーション」という大きな潮流
超高齢化時代において、地方エリアを中心とした平屋、コンパクト住宅という志向からは、「平屋→減築」や1階完結型リノベーション、つまり「最適化リノベーション」がキーワードと言えます。
終の住まいづくりのサポーターとして、ゾーニング変更の提案力、確認申請に関わる判断、減築断面に対する施工力や配慮(雨養生など)が求められます。単にリノベーションという訴求だけでなく、リノベーションの中でさらにカテゴリーを絞ることが有効である今、大きな候補の一つと言えるでしょう。
集客の観点から補足ですが、ボリュームゾーンでもあるプレシニア層は60代に比べ、特に50代の新聞購読率の減少が顕著です。アナログとデジタルの最適配分の巧拙が分かれ目になります。
同時にプレシニアの顕在客と潜在客へのアプローチが肝要だとつくづく感じています。販促企画においては体感、相談、学びの3要素のバランスには留意したいところです。つまり、見学会、相談会、セミナーを巧みに組み合わせ、顕在客、潜在客、どちらかに偏ることなくアプローチするかたちがますます大切になってくると考えています。
「建てる」時代から「活かす」リノベーションが主役に
職人不足や人件費高騰、生産性の観点から、初期段階での概算精度向上や、リノベーションでの施工品質の安定がAI活用とともに期待されます。
確認申請のプロセスにおいてもデジタルツールを活用し、省力化できているクライアント例があります。新築で先行する、こうした取り組みがリノベーションにも浸透することで、属人化しない再現性の高いリノベーション事業モデルの可能性が広がります。大きな壁として立ちはだかっていた積算や施工面でのハードルが下がることにより、まさにリノベーション市場が活性化される時代が訪れようとしています。
以上、「代替リノベーション」「最適化リノベーション」について解説しました。とは言え、4つの要素として何を記入するか、どこに着眼するかは主観が入りやすいという懸念もあります。さらに影響度、地域性の違いもある中、より客観的な考察を意識しながら、ワークショップ形式で議論するのも一つです。こうした一連のプロセス自体に、自社の方向性を決めるヒントがあると考えています。
さまざまな識者により、経営の大原則として時流適応の大切さが語り継がれてきました。不確実な時代、かつリソースが限られる中小工務店こそ、なおさら着眼大局の姿勢で自社にとっての最適解を見出していただきたいと思います。

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