イケダコーポレーション(大阪府大阪市)主催の「エコバウ建築ツアー2025」で、環境ジャーナリストで今回のツアーコーディネーターを務めた滝川薫さんからうかがった話を番外編として共有する。
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滝川薫さん | スイス在住の環境視察専門家・元環境ジャーナリスト。東京外国語大学を卒業後、造園・植栽デザインをスイスで学び、1999年から環境・再生可能エネルギー・エコ建築・有機農業をテーマに執筆、視察セミナー、通訳を行う。日本とスイスのサステナビリティの橋渡し役を務めている |
スイスでは、10代の若者たちが社会に出る準備として「職業教育制度」を選ぶことが一般的だ。義務教育修了(中学卒業)後、若者は企業で働きながら週1日ほど職業学校に通い、約3~4年をかけて実務と基礎知識を同時に習得する。国が認定する職業資格は200種類以上に及び、給仕や事務、製図士、大工と多岐にわたる。職業資格を得ることがスイスでは「大人への第一歩」とされ、社会的評価も高い。
この制度の特徴は、国ではなく各業界団体がカリキュラムをつくる点にある。現場の課題や最新技術が迅速に教育内容へ反映されるため、常に“リアルタイムの産業”に沿った学びが提供される。教育費は無償で、見習い生にもレベルに応じた給与が支払われる。企業側にとっても、将来の人材を育成しながら自社の文化や技術を継承できる利点がある。
こうした仕組みは、日本の「職業訓練校(ポリテクセンターなど)」と性格が大きく異なる。日本の職業訓練校は主に高校卒業後の若者や転職・再就職を目指す成人が対象で、企業との雇用関係を持たずに一定期間、学校で集中的に技術を学ぶ形が中心だ。
実習はあるものの、企業で働きながら現場で経験を積むスイスの“企業内実務”とは制度上分離されている。また訓練校修了がそのまま国家資格につながるケースは少なく、多くの場合は技能検定への受検資格を得るにとどまる。
一方スイスでは、見習い生が企業と正式に契約を結び、給与を得ながら日常的に実際の仕事に携わる。仕事の成果がそのまま評価となり、3~4年の修了時に受ける職業試験に合格すれば国家資格としての職業資格が授与される。学校教育・企業実習・資格取得が一体となった体系が社会の基盤として機能している点は、日本と対照的な部分といえる。
人気職種に浮上する大工
この制度の中でも、近年とりわけ注目されているのが「大工」なのだという。職業教育は4年間と長く、伝統的な継手や構造の理解から現代木造建築に不可欠なパネル工法まで、幅広い技能を身につける必要がある。基礎設計や製材技術も習得し、手仕事とデジタル技術の双方に精通した実務者となる。

[表1]若い男性に人気の職業教育ランキング2022
大工は若い男性が選ぶ職業トップ10のうち第2位に入るほど高い人気を誇る[表1]。その背景には、木造建築が持続可能な社会づくりの象徴的存在として評価されている状況がある。木を扱う職はエコロジカルで社会価値が高いと見なされ、若者から「未来のある仕事」として支持を集めているのだ。
とはいえ地方の木造会社は規模が限られ、育成人数にも制約がある。それでもスイス全体では現在約3500人が大工見習いとして学び、そのうち女性は4%と少数ながら増加傾向にあるという。毎年約800人が資格を取得し、大工の平均年齢層は若い。
15~36歳までが大工全体の3分の2を占め、年齢が上がると体力面を考慮して設計職へ転じるケースが多いという。
“稼げる職業”という認識
大工の人気を支えるもう一つの要素が・・・
この記事は新建ハウジング3月20日号8面(2026年3月20日発行)に掲載しています。
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